上場株に投資してきたファンドが未上場のスタートアップ企業に照準を合わせた。
国内のスタートアップ投資はこれまでベンチャーキャピタル(VC※)や事業会社が担ってきた。
※ベンチャーキャピタル(Venture capital、VC)とは、未上場の新興企業(ベンチャー企業)に出資して株式を取得し、将来的にその企業が株式を公開(上場)した際に株式を売却し、大きな値上がり益の獲得を目指す投資会社や投資ファンドのこと。
最近はヘッジファンドやプライベート・エクイティ(PE=企業買収)ファンドの存在感が増している。アメリカで拡大しているファンド間のすみ分けを越える「クロスオーバー投資」が日本でも定着してきた。
一般にファンドはスタートアップ、成熟企業、不動産など投資対象別に別れており、決まった資産以外には投資できない。想定されるリスク・リターンが異なり資金の出し手が管理しにくくなるためだ。
ファンドが他の資産にも投資をする場合、規約の変更や専用ファンドの新設が必要である。その手間をかけてもスタートアップに参入する訳は、メイン投資先の上場株・企業買収で競合が増え、他社と違いを出しにくくなったことがある。
成熟企業は倒産リスクが低い半面、企業価値を大きく上げることは難しい、一方スタートアップはIPOで企業かちが数十倍になる例もある。ファンドの一部資金を回すことで、成績が高まる可能性がある。
国内PEファンドは、約80社あり1つの案件を複数のファンドが取り合うことも多く、リターンが上がりにくくなっている。
ヘッジファンドの場合、流動性の低い未公開株のリスクよりも、IPOを待つことによる機会損失の方が大きいとみる。スタートアップにとってもIPOに伴い株を順次売却するVCより、長期保有が期待できる。
投資プレイヤーが増え、スタートアップの資金調達は活性化している。2021年1〜6月の1件あたり平均調達額は5.8億円と前同比37%増加した。未上場で大型調達できれば、上場を先延ばしし、目先の利益を追わずに攻めの投資もできる。
一方、スタートアップ投資市場の過熱感を警戒する声は増えている。
所見
スタートアップへの投資はハイリスク・ハイリターン。基本的に上場株にしか投資ができない個人もクラウドファンディングなどを通じて投資する方法も出ている。
ヘッジファンドやPEファンドの垣根を越えての投資するが活性化するなら個人もインデックス投信や個別株だけでなく、一部はスタートアップへの投資も検討するべきか。