不動産に「共同富裕」と「金融リスクの解消」の重圧がかかる
中国の恒大集団は9/23の人民元建て債の利払いを表明し、債務不履行は一旦回避の見通しがたった。香港市場では恒大集団の株価が21日(22日は休場)比で一時30%超上昇した。ただ今後については、まだまだ見通しが立っていない。
習近平指導部が唱える「共同富裕(ともに豊かになる)」と「金融リスクの解消」が中国の不動産会社の経営に重圧をかけている。過剰負債は不動産会社に共通する問題である。第2、第3の「恒大集団」が現れる可能性はある。
中国の住宅業界は過去20年、繁栄をしてきた。高度成長に農村から都市への人口移動が加わり、需要に供給が追いつかない状況が続いたためだ。以前の日本と同じように「住宅神話」「不動産神話」を生み出し、投機の状況になっている。
上海の労働者の平均年収は12万4056元(210万円)に対して、中古住宅の平均価格は731万元(1億2370万円)と約59倍となっている。9〜14倍の東京やニューヨーク、ロンドンを大きく上回る。その住宅市場は支えてきたのが銀行などの金融機関だ。不動産融資の残高は2021年6月時点で50兆7800億元(859兆1976億)となり、中国GDPの約半分に相当する。
2020年、大手不動産会社に対して守るべき「3つのレッドライン」(財務指針)を設定
中国人民銀行(中央銀行)は危機感を強めて2020年夏に「3つのレッドライン」を設定した。
- 総資産に対する負債(前受金を除く)の比率が70%以下
- 自己資本に対する負債比率が100%以下
- 短期負債を上回る現金の保有
基準を破った企業への融資制限を銀行に指導する。調査によると2021年6月時点で、主要85社のうち基準を全て守っっているのは4割に満たない状況。恒大集団も1指標しか守れていない。
恒大集団の破綻に備え、中国当局が指示
中国当局が恒大集団の経営破綻に地方政府に指示していたことが9/23にわかった。同社の破綻による社会への悪影響を最小限に抑えるための措置のようだ。
会計士や法律家などの専門チームをつくり、各地で恒大集団が手がける事業の財務状況などを調査するほか、同社の不動産開発事業を引き継ぐ準備を進めるような内容とのこと。
中国の住宅高騰は資産効果を通じ個人消費を支えてきた。住宅バブルの崩壊は消費失速、金融機関の不良債権、雇用の喪失など広範囲に打撃を与え、その悪影響が世界に波及しかねない。
所見
「共同富裕」・「金融リスクの解消」と「不動産会社への締め付け」の落とし所はどこか。中国政府は恒大集団の破綻には備え動き出しているが、本当に破綻にまで追い込むつもりなのか。
確かに年収の59倍となった住宅市場はバブルと思われるので、是正が必要。習近平は世界経済への影響を極力抑えるような方法で進めなければ、「習近平ショック」を起こしてしまう。そうなると、3期目は危ういはずだ、ここは世界市場との対話も丁寧に進めてほしいと切に願う。