官僚(財務次官)からの牽制球
矢野康治財務事務次官が「文藝春秋11月号」に「与野党ともに財政バラマキに興じているが、日本人の多くはそれを歓迎するほど愚かではない。放置すればいずれ財政破綻する」と寄稿した。
総選挙が間近に迫る中、コロナ禍という大義の中、与野党がバラマキ・財政を有権者の観心をかう道具に使う状況。2020年度に3度の補正予算を組んで積み上げたコロナ対策費は、まだ費用対効果の検証をされていない。
このタイミングで矢野氏が雑誌寄稿というかたちで財政問題を世に問うたのは、総選挙で規律なき支出が各党の選挙公約にならぶのを見越してのこと。
- 岸田首相は、数十兆規模の経済対策と繰り返す。
- 立憲民主党は「年収が1,000万円以下の人の所得税を1年間実質的に免除し、消費税率を期間限定で5%に下げる」と公約をかかげる。
矢野氏の寄稿に対して、自民党の高市政調会長は「失礼な言い方だ。基礎的財政収支の黒字化にこだわり、本当に困っている人を助けない。こんなばかげた話はない」と全否定した。公明党の竹内政調会長も「政治家はそれほどばかではない」とツイートした。与党幹部は不快感をあらわにしている。
財務次官の上役にあたる鈴木財務相は記者会見で与野党の経済政策を「バラマキ合戦」と批判した矢野氏の雑誌寄稿について「今までの政府の方針に基本の部分において反するようなものではない」と述べた。
麻生前財務相からも了解を得ているほか、鈴木氏にも出版前に連絡があり、OKを出している。鈴木氏は「財政健全化に向けた一般的な政策論」を個人の立場で表明したものとし、問題視しない立場を明確にしたもの。
経済同友会の桜田代表幹事は「100%賛成」
桜田代表幹事は矢野氏の寄稿に対して「書いてあることは事実だ。100%賛成する」と述べた。「多くの政府債務を抱え、成長率と生産性の低い国がそれを放っておけない」と強調した。
所見
日本は29%が65歳以上と世界一高齢化が進み、社会保障費が年々のしかかっている。赤字国債を発行しなければ、税収だけでは賄えない。そういったコロナ禍とは別に、元々の問題がある。本当にプライマリーバランスを黒字化にするには、年寄りに金を使わない構造にするしかない。
国債の引き受け手も、1番は日銀となっているため、例えるなら父親が母親から借金をしている状況。家庭としては破綻しない錬金術である。
健全な財政という綺麗事は今、議論すべきでは無い。