ESG(環境・社会・企業統治)関連の投信設定ペースが、2021年の足下、15本と過去最高の昨年に並んだ。運用残高は7月時点で3兆円を超えて、2019年末から6倍に膨らんだ。
環境意識が高まる個人投資家マネーの受け皿になっている。そこで注目されているのが、社会的な開発と投資リターンの両立を目指す「インパクト投資」と呼ばれる手法だ。
野村アセットマネジメントは、「世の中を良くする企業ファンド」を8月に設定した、同手法を取り入れている。ゴールドマンサックスも同手法で8月「GSグローバル環境リーダーズ」を設定、環境問題の解決につながる事業を手掛ける企業に投資する。
各社は「個人投資家の環境意識が非常に高まっているため、ニーズに応える」と狙いを話す。
収益面でも見入りが大きい、ESG関連ファンドの信託報酬は平均1.44%、通常のアクティブ投信平均1.23%に比べて高い。信託報酬の引き下げ競争の中、「渡りに船」状態。
一方、ESG投信は実際は通常の投信と変わらない「見せかけ」との批判もある。一部ESG投信は、それまでの投信と組み入れ銘柄上位がほとんど変わらないものもある、EUは3月にサステナブルファイナンス開示規則を導入し、ESG関連の情報開示を求めている。日本でも金融庁が投信の情報開示を拡充するように要請している。
運用業界は短期型のテーマ投信を設定しては、資金流出する悪循環を繰り返してきた。ESG投信が持続するか、注目される。
所見
ESGは持続的に拡大すると思う。特に環境対策は「待ったなし」の状況で、収益度外視でも企業や国が対応せざるを得ない。
収益構造として多少の非効率があったとしても、ESGに対応する企業が支持され、成長すると見込み、そこに個人投資家も関心が集めている。
「見せかけ」ではなく本当にESGに投資されているか、チェックは必要であるが、この分野には信託報酬が少し高くとも投資をお勧めする。