コロナは間接要因も含め、アメリカ人の寿命を3年も縮めている。
恐ろしい疫病。
アメリカ人の平均寿命が25ぶり低水準
米疾病対策センター(CDC)は8月31日、2021年の米国人の平均寿命が76.1歳と20年から0.9年短くなり、1996年以来の低水準にとどまったと発表した。
新型コロナウイルスの感染拡大に加え、薬物の過剰摂取や自殺の増加などが響いた。
CDC傘下の米国立健康統計センター(NCHS)がまとめた。
米国の平均寿命が前年比でマイナスになるのは2年連続で、コロナ禍前の2019年からは計2.7年減った。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などによると、2年間の短縮幅としては1920年代以来、100年ぶりの落ち込みとなった。
21年は男性が73.2歳(19年は76.3歳)、女性が79.1歳(19年は81.4歳)となり、男女ともにコロナ禍前から寿命が2~3年縮まった。
21年のマイナス幅はコロナ禍が直撃した20年(1.8年)に比べ小さかった。
しかし薬物の過剰摂取を含む不慮の傷病、自殺、肝疾患といったコロナ感染以外の死亡要因も増え、全体の寿命減少の傾向は止まらなかった。
米国の寿命低下の背景には、基礎疾患率の高さが関係している可能性がある。
CDCの調査によると、20年3月~21年3月までにコロナに感染して入院した約54万人の患者のうち、94.9%が脂質異常症や肥満、高血圧といった感染症の悪化リスクを高める疾患を最低1つ抱えていた。
さらにコロナ禍で経済的に困窮し、精神的に追い込まれる米市民も急増している。
全米規模で麻薬や自殺による死亡が増えているのはそのためだ。
中毒性が問題になっている医療用麻薬オピオイドの過剰接種による死者も大幅に増えた。
人種別で寿命に大きな差がある
人種別では、アメリカ先住民とアラスカ先住民の平均寿命が65.2歳と過去2年で6.6年短くなり、落ち込みが目立った。
米国全体の平均寿命より10年以上短い。
コロナ流行中でも外で働き続けなければならない低賃金職種に就いているケースが多く、感染症や合併症による死者が増えた。
先住民地域は医療機関や医師が不足していることも寿命低下に影響しているとみられる。
テキサス大学オースティン校人口研究センターのイリヤ・グーチン研究員は「アメリカ・アラスカ先住民は依然、社会的に不利な立場にあり、教育や所得の水準が低い。
薬物・アルコール中毒も問題になっており、特に若者の死亡率が高い」と指摘する。
一方、白人系(76.4歳)やアジア系(83.5歳)は先住民や黒人系に比べ長寿で、平均寿命でも人種間格差がある実態を浮き彫りにした。
生活の質や命の価値を巡る議論は分断が進む米社会で新たな火種になりかねない。