貿易赤字、輸出企業の海外移転、世界各国との金利差、資源高、
構造的に円安基調になる状況では日本株はドルベースで下落し続ける。海外投資家が離れるのも仕方がない。
海外投資家の「日本株離れ」
海外投資家の「日本株離れ」が進んでいる。
東京証券取引所が6日発表した2022年4~9月の投資部門別売買動向(東京・名古屋両市場)によると、海外投資家は現物株を1兆5281億円売り越した。
もはや円安が日本企業にとって大きなプラスとは言えないなかで、ドル建てでの価値の目減りを嫌い、日本株を売る姿勢を強めている。
売越額は4~9月としては2年ぶりの大きさになった。
半期ベースでは売り越しは21年上半期から3期連続で、過去10半期で9回目となる。
9月第4週(26~30日)は、海外投資家の現物と先物の合計売越額が2兆円を超え、さかのぼれる2012年以降で最大となった。
円安は輸出企業にプラス作用のはずが
本来なら大幅に円安が進めば輸出企業などの業績拡大が期待され、外国人の買いは増える傾向にあった。
安倍晋三政権による「アベノミクス」が始まった12年10月~13年3月は2割弱の円安が進み、海外投資家は約6兆円と大幅に買い越した。
しかし、日本企業は生産拠点の海外移転を進め、輸出数量も過去に比べ伸びなくなり、円安のメリットを享受しにくくなっている。
「海外で原材料を調達する企業にとっては円安によるコスト増のマイナス影響も大きい」(コムジェスト・アセットマネジメントのリチャード・ケイ氏)。
「円安なら海外勢買い」という構造は変わった。
円安の業績の押し上げ効果をかつてほど期待しにくいなか、海外投資家はドル建てで見たときの日本株の価値の目減りを警戒している。
22年4~9月にドル建て日経平均株価は約2割下落し、半期ベースの下落率としては10年以降で最大になった。
株式市場での日本企業の地盤沈下は進んでいる。
先進国全体の株式の値動きを示すMSCIワールド指数に採用される日本企業は、20年6月時点の約320社から約240社に減った。
ドル換算した企業価値が低く見積もられるケースが増え、指数に連動して買うインデックス型のファンドの投資対象からも外れることになる。
外国人の売りを受け止めたのが個人と事業法人だ。
個人は3半期連続の買い越しで4~9月は1兆4517億円と、半期としてはデータをさかのぼれる1983年以降で最大となった。
株価調整局面で個人投資家の押し目買いが活発になった。
事業法人の買越額も2兆9815億円と半期で過去最大となった。
QUICKによると、4~9月期に自社株買いを発表した企業数は513社と前年同期比で約90社(2割)増えた。
「小売りや運輸などコロナ禍で業況が厳しかった企業の業績回復が進めば、自社株買いの動きはさらに広がると予想される」(大和総研の中村昌宏氏)との指摘があった。