アメリカ株式市場でハイテク銘柄の株安が進んでいる。主要5社「GAFAM」の時価総額は9月上旬に9.3兆ドル(約1,030兆円)と過去最大に膨れ上がっていたが、10月4日時点では8.4兆ドルと1ヶ月あまりで8,500億ドル(約95兆円)減った。
Facebookは一時6%下落し、5月下旬以来の安値をつけた。検索サイトのGoogleの親会社アルファベットも4%の下落、アップル、マイクロソフト、アマゾンもそれぞれ3%下落し、ハイテク株は総崩れしている。
ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は3ヶ月半ぶりの安値なっている。これまでハイテク銘柄はコロナ禍での巣ごもりやテレワークの需要を取り込み、高い成長期待から世界中から緩和マネーを引き込んでいた。
金利上昇・規制・世界的な批判などの下落要素
資源価格の高騰によるインフレ警戒感の高まり
減速の背景にあるのは、資源価格の高騰によるインフレ警戒感の高まりである。先進国を中心にワクチンも普及し経済が回復する一方、物流停滞や人手不足から供給不足が深刻化。原油価格は8月下旬から高騰し10月4日には2014年11月以来7年ぶりの高値をつけた。
これによりアメリカのFRBが量的緩和の縮小(テーパリング)や利上げを前倒しするとの観測が浮上。8月上旬に1.1%台であったアメリカの長期金利が9月下旬には1.5%台半ばまで上昇した。
金利が上昇すると、理論株価は下がりやすくなり、長期の成長を織り込んでいるテック株は割高感から売られやすくなる。
ハイテク企業に対する当局の規制強化
ハイテク企業に対する規制強化も懸念材料となっている。Facebookは10月3日に、児童保護などに関する不都合な調査結果を隠蔽したと同社の元社員が実名で告発した。当局の規制がより強まるとの思惑が広がった。
アップルも人気ゲーム「フォートナイト」のアプリ配信の仕組みについてアメリカ企業から反トラスト法(独占禁止法)に抵触していると提訴された。9月の連邦地裁での裁判では違法認定には至らなかったが、課金ルールの見直しが命じられた。
アメリカ連邦取引委員会(FTC)の委員長にリナ・カーンを起用
バイデン大統領はハイテク企業による市場独占を問題視し、6月にFTCの委員長にアマゾンに否定的なリナ・カーン氏を起用した。
経済協力開発機構(OECD)はハイテク企業への課税ルールを打ち出す方針
国際的にも様々な国でビジネスをしながら収益に応じた税金を支払っていないことへの批判が根強く、OECDは今月にもハイテク企業を中心にグローバル企業への課税ルール打ち出す方針。
所見
「GAFAM」は儲けすぎた、市場を独占しすぎた、そして税金を支払っていない。そのような世界的な批判もあり、急速に規制が広がっている。ただ、「GAFAM」の株価が世界の相場を支えている状況もある。締め付けし、株価が下がるだけであれば規制しない方が良い。巨大テック企業が衰退する裏で、本当に他の企業が育つのか。S&Pなどへ投資をして資産を増やそうとしている多くの投資家は複雑な心境で見守っているでしょう。(私もです)