米連邦準備理事会(FRB)が早期の利下げを期待する市場へのけん制を強めている。
4日公表した2022年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨で、23年中の利下げ転換を予想する参加者が一人もいなかったことを明らかにした。
粘着質なインフレが続き、金融引き締めが長期間に及ぶ可能性を強く示唆した。
「不当な金融環境の緩和は、物価安定のための私たちの努力を複雑にしてしまう」。
FOMC参加者の総意として記述された意見には「不当」「誤解」という強い表現で、早期利下げを期待する市場へのいらだちをにじませた。
「23年に政策金利を下げ始めることが適切になると予想した参加者は一人もいなかった」とも明記した。
FRBが操作できるのは短期金利のみだが、実体経済には市場で決まる長期金利を通じて波及する面が大きい。
10年債利回りは22年11月上旬の4.2%程度から足元は3.7%前後まで低下している。
景気後退やインフレの鈍化を予想する市場関係者が、23年に金融緩和へ転換すると見込んでいる。
しかし、FRBは議事要旨で「インフレが持続的に低下する経路にあると確信するには、さらに大幅な進展を示す証拠が必要だ」とくぎを刺した。
新型コロナウイルス禍で早期退職した人が労働市場に戻らず企業が引き続き雇用に熱心なため、粘着質なインフレが長引くと警戒している。
FOMC参加者の数人は「人手不足で採用の難しさを経験した企業は、経済が減速しても雇用の確保に熱心だ」と指摘する。
米国のレイオフ(一時解雇)は22年11月も135万人と10~19年平均の180万人を下回る。
コロナ禍で人を増やしていたテック業界では人員調整が進むが、全体でみれば歴史的な低位だ。
人手不足の長期化で求人件数が高止まりすれば、賃金の上昇に歯止めがかかりにくくなる。
実際、企業はコストを増やしてでも人員確保を進めようとしている。
米労働省が企業側の雇用負担を算出した「雇用コスト指数」のうち、賃金を示す指数は22年7~9月期で前年同期比5.1%上昇し、比較可能な01年以降でもっとも高い伸びとなった。
賃金だけでなく企業が福利厚生に投じるコストも4.9%と17年ぶりの上昇率になっており、人集めに苦慮している企業の焦りがにじむ。
FOMC参加者は次回の2月会合での利上げ幅も「データ次第」とし、12月会合と同じ0.5%の大幅利上げを継続する可能性を残した。
金利先物市場は7割が0.25%の利上げを予想しているが、3割は0.5%を予想している。
FRB内には「引き締め過ぎ」のリスクを警戒する声もある。
米サンフランシスコ連銀は、中銀が保有資産を圧縮する量的引き締め(QT)などを含めた引き締め効果は既に政策金利を6%台前半まで引き上げた分に相当するとの分析を公表した。
景気後退が濃厚になれば、FOMC参加者の足並みが乱れる可能性もある。