円安が止まらなければ、企業物価は上がり続ける。
日本国民も企業が値上げすることに免疫が出来てきた。
日本の消費者物価も5%上昇程度までは、すぐに到達するのではないか。
8月企業物価9.0%上昇、円安影響
日銀が13日発表した8月の企業物価指数は前年同月比9.0%上昇した。
円安に歯止めがかからず、輸入物価の伸びのうち円安の影響が5割を占めた。
これまで物価上昇の主因だったエネルギー価格の上昇と同様に影響が大きくなっている。
円の下落が続けば、物価高が想定以上に長引く可能性もある。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。
前年同月を上回るのは18カ月連続で、上昇率が5%以上になるのも16カ月連続となった。
これまではウクライナ危機で高騰した資源・エネルギー価格が物価を押し上げてきたが、足元では円安の影響が拡大している。
7月末に1ドル=133円台だった円相場は8月末には139円台まで下落。9月には144円台まで下落し、24年ぶり安値を更新した。
輸入物価の上昇率はドルなどの契約通貨ベースで21.7%だが円ベースでは42.5%になる。
輸入物価の上昇率のうち、ほぼ半分が円安の影響になる。
日銀の黒田東彦総裁は7月、「輸入物価の上昇は確かに円安の影響も出ている」とした上で、「国際商品市況の上昇の影響の方が大きい」と語っていた。
しかし、ここにきて円安の影響が大きくなっている。
大和証券の末広徹氏の試算によると消費者物価指数(生鮮食品除く)でみても、前回の7月の上昇率(2.4%)のうち、2割程度が円安の影響という。
企業は値上げを迫られる
止まらぬ円安で企業は追加値上げを迫られる。
キューピーは10月、昨年7月以降で3回目となるマヨネーズの値上げに踏み切る。
原料の食用油などの価格が上昇しているためだ。
「キユーピーマヨネーズ 450g」の参考小売価格は475円と、昨年7月の値上げ前と比べて100円弱高くなる。
AGCは国内の建築用ガラスの販売価格を10月1日納入分から最大で約40%引き上げる。
昨年7月にも最大30%の値上げを表明しているが、今回の約40%の値上げ幅は直近10年で過去最大となる。
旭化成も22年度に入って塗料に使うアルミ顔料など複数商品の値上げを表明した。
輸出品も一部値上げ対象とした。
日本製紙など製紙各社は印刷用紙について、21年秋に原燃料価格や物流費の上昇を受けて22年1月出荷分から15%以上の値上げを打ち出していた。
円安などの輸入コスト上昇を反映するため6月に追加値上げを表明した。
今年に入ってからの上げ幅は計3割に達する。
「必要に応じて3回目の価格改定を依頼する可能性もある」(日本製紙)
物価上昇が進んでいるのは米欧も同じだ。
欧米の企業物価指数に相当する7月の「生産者物価指数」は米国で前年同月比9.8%、ユーロ圏が37.9%上昇した。
「米国は需要の強さが物価高につながっているが、ユーロ圏は天然ガス価格上昇の影響が大きい」(第一生命経済研究所の田中理氏)といい、背景には違いもある。
供給要因が大きい欧州や日本では、物価高がさらに進むとの見方が多い。
加速する円安が消費者物価をさらに押し上げ、年内にも政府・日銀が目指す物価上昇率2%を超え、3%に届くとの観測が広がっている。
政府が物価高対応に神経をとがらせるなか、異次元緩和を続ける日銀の動向に市場の注目が集まっている。