きらやか銀行(山形市)などを傘下に持つじもとホールディングス(HD、仙台市)が、金融機能強化法に基づく公的資金注入を金融庁に申請する検討に入ったことが分かった。
地銀公的資金注入は8年ぶり
新型コロナウイルス禍で苦境に陥る中小企業の支援を目的とした特例制度を利用し、きらやか銀行に対して200億円規模の注入を求める。地銀への公的資金注入は2014年の豊和銀行以来8年ぶりとなる。同グループが近く公表する。
コロナ禍で経営悪化
コロナ禍による地域経済の疲弊などで経営悪化が進んだことが背景にある。きらやか銀行は2021年3月期には最終赤字に転落していた。
今後、地域再生を進めていくためにも、自己資本の拡充が必要と判断した。
きらやか銀行はSBIホールディングスとの資本業務提携などで収益力の強化を目指したが、その後、有価証券運用などでも苦戦が続いていた。
21年4~9月期にはその他有価証券の評価損が37億円に拡大。今年に入って起きたロシアによるウクライナ侵攻に端を発する市場の混乱の影響も懸念されていた。
『コロナ特例』申請第1号
今回利用するのは、コロナ禍で落ち込む地域経済を下支えするために設けられた公的資金注入の「コロナ特例」だ。申請第1号となる見通し。
通常は15年の期限を実質的に撤廃。効率性の目標や経営責任なども震災特例と同様に問われないようにして、銀行が申請しやすくした。
自己資本不足による貸し渋りなどを避けるための特例で、中小企業などに資金が行き渡りやくする狙いがある。
コロナ禍で地域経済への逆風が強まるなか、経営基盤の強化に動く地銀が今後続く可能性がある。
きらやか銀へは既に300億円を注入
きらやか銀は09年に200億円の公的資金注入を受けた。12年には仙台銀行との経営統合をきっかけに、収益目標や経営責任を問われない「震災特例」で当初の200億円の切り替えも含めて計300億円の注入を受けていた。
このうち200億円の返済期限が24年9月に迫っていた。
じもとホールディングスが金融機能強化法に基づいて策定し昨年9月に金融庁に承認された経営強化計画では、きらやか銀の公的資金について、100億円分は37年3月末までに415億円の利益剰余金を確保して返済する計画を記載。
24年9月返済の200億円分についても収益の積み上げで返済する意向を示しつつ、「新たな資本調達についての検討も開始している」としていた。
所見
既に300億円の公的資金注入をしている『きらやか銀』へおかわりの200億円。
地域経済はコロナ禍のダメージが大きく、地銀にも影響が出ている。有価証券の含み損も大きく、公的資金へ注入の結果に。
他の地銀も『コロナ特例』の利用が続く可能性がある。
金利が上がりつつあり、経営改善も見込める銀行業界であるが、既に手遅れになっているのか。