新型コロナウイルスの感染拡大前に比べて利益が大きく変動したのはどこか。
コロナ前との比較倍率、首位は三菱マテリアル
2019年3月期と22年3月期の純利益額を比較すると、資源価格上昇の恩恵を受けた三菱マテリアルが34.7倍で首位となり、他の非鉄大手も上位に入った。
一方、オリエンタルランドや鉄道大手などレジャー系はコロナ影響がなお重荷になっている。
比較可能な時価総額1000億円以上の東証プライム上場の3月期決算企業を比較した。
三菱マテリアルはコロナ後に金属価格の上昇を背景に製錬などの金属事業が伸び、権益を持つチリの銅鉱山からの配当金も増えた。
米国などの景気回復により超硬工具や自動車向け銅加工品の販売も好調だった。
資源、半導体関連が好調
3位となったUACJは脱プラスチックの潮流で北米でアルミ缶需要が拡大しているほか、アルミ地金価格の上昇を受けて棚卸し資産の評価の好転も利益拡大につながった。
アルミ圧延品は半導体製造装置や自動車向けの販売が増えた。
非鉄金属大手では三井金属や住友金属鉱山も利益増加率の上位に入った。
7位のオリンパスは消化器内視鏡で売り上げを伸ばしている。
23年3月期は「半導体不足などのリスクを織り込み、売上高成長を1~2%程度押し下げる前提で業績予想をたてている」(武田睦史最高財務責任者)とするが、影響を乗り越えて2期連続の最高益を見込む。
コロナ関連の『特需』の恩恵企業
新型コロナ対応関連の政府からの補助金や、PCR検査需要といった「特需」の恩恵が利益を押し上げた企業もある。
セルフうどんの「丸亀製麺」を展開する2位のトリドールホールディングスは、新型コロナに伴う営業時間の制限に対して政府や自治体から支給される時短協力金などの補助金を128億円計上し、利益を大きく押し上げた。
PCR検査に関わるタカラバイオやビー・エム・エルも拡大が目立つ。
資源高、コロナの影響を受ける企業
一方、黒字企業のなかで純利益の減少率が最大だったのは東京電力ホールディングスで、3年前比で98%減った。
原子力発電所の再稼働が進まない中で、ウクライナ侵攻の影響や円安で原燃料価格の高騰が収益を圧迫した。
23年3月期も影響が続き、大手電力10社のうち東電HDを含む9社が業績見通しを未定とした。
OLCは91%減で減少率が3番目の大きさだった。3月以降の入園制限の緩和で2期ぶりの黒字を確保したものの、新型コロナの長期化で収益回復が遅れた。22年3月期の入園者数は約1205万人と、19年3月期の約3256万人の半分以下にとどまる。
テレワークの定着などの影響で鉄道事業の東急や京王電鉄も利益が大きく減少した。
東急は運賃を平均12.9%引き上げる運賃改定を国交省に申請して認可された。
値上げで採算改善を目指す。東芝は22年3月期に1900億円あまりの純利益を計上したものの、メモリー事業の売却益が利益を大きく押し上げた19年3月期比では8割超の減益となった。
外国人観光客の受け入れ再開で好転か
足元は岸田文雄首相が外国人観光客の新規入国を10日から再開すると表明するなど、経済活動が再始動する期待もある。
岡三証券の小川佳紀投資情報部長は「日本はこれまでコロナ後の経済活動の再開が遅れており、今後は観光関連などに業績回復を織り込む動きも出てきそうだ」と指摘する。
所見
コロナや資源高で企業は大変、というニュースが多いが、資源高やコロナ特需で儲かる企業もある。
世が大きく動く時、何が儲かるか考えられるセンスがあれば資産形成も楽なのだが、難しい。