サントリー食品インターナショナル(サントリーBF)は16日、「サントリー天然水」など清涼飲料を値上げすると発表した。
ペットボトルなど主要商品を20円上げる
10月1日出荷分からペットボトルを中心に主要商品を希望小売価格ベースで20円引き上げる。
他社にも追随の動きが広がる見込みだ。
一方、食品などの値上げが相次ぐ中で消費者の節約志向も強まっている。原材料高と消費者心理の板挟みをどう乗り切るかという課題を残す。
値上げするのは「サントリー天然水」「クラフトボス」「サントリー烏龍茶」など全165品。
業務用や一部の高付加価値品なども含めれば6~20%の値上げになる。容量も500ミリリットル前後の小型ペットボトルや2リットルなどの大型容器が広く対象となる。
ボトル缶以外の缶商品や濃縮タイプの商品など一部は価格を据え置く。
スーパーやコンビニエンスストア、自動販売機などあらゆる販売チャネルが対象だ。
幅広いチャネルや容量で一斉に価格を引き上げるのは同社として初めてとなる。
あらゆるコストが高騰、各社値上げか
コンビニやスーパーなどの「手売りチャネル」では、サントリーBFがシェア首位だ。
飲料総研(東京・新宿)の宮下和浩氏は「あらゆるコストが高騰しており、全ての容量・容器、販売チャネルで一刻も早く値上げしたいのは各社とも同じだ。
サントリーの値上げに各社が追随するのは確実だろう」と分析する。
サントリーBFの発表を受け、キリンビバレッジは「状況は厳しさを増している。価格の見直しについて継続的に検討を進める」と話す。
アサヒ飲料も「環境を注視しながら、検討していく」と追随姿勢をにじませた。
長引くデフレで低収益、コロナ禍・コスト高が追い討ち
飲料メーカーは長引くデフレを背景に国内事業で低収益に直面。
ここに来て新型コロナウイルス感染拡大による需給変動・物流混乱に伴う原材料価格や輸送費の上昇にも苦しんでいる。
サントリーの一斉値上げの発表はそうした業界の苦境を象徴する。
消費者の節約思考に拍車がかかるか
一方、代表的な生活必需品である飲料の値上げはインパクトが大きい。
消費者の心理を冷え込ませれば、節約志向に拍車がかかる可能性もある。
家計簿アプリなどを手がけるスマートアイデア(東京・中央)が4月に実施した調査によると値上げにより家計への負担を感じるとした人は85%にのぼる。
「値上げしてほしくないもの」では「食料品」が最も多い。
実際、消費税が8%に上がった14年、飲料各社は増税に伴って自販機の飲料の価格を10円引き上げた。14年の自販機経由の販売数量は13年比で5%減った。
今回の20円規模の大幅な値上げは消費者心理にも一定の影響を与えうる。
スーパーなど小売店で値上げがどこまで浸透するかも焦点だ。小売りにとっても飲料は集客効果の大きい商材だけに、値上げ受け入れの攻防も激しくなりそうだ。
飲料各社は3年前も大型ペットボトルの20円の引き上げを打ち出したが、競争激化で店頭販売価格は再び下落。
値上げはほとんど浸透しなかったともいわれる。シェア維持のために販売数量に応じて小売店に支払う販売奨励金(リベート)費用は膨らむ一方だ。
メーカー、小売り、消費者の攻防
飲料に先駆けて値上げの表明が進む食品では「販売数量は減りそうだが、1人向けの小分け品など需要に応える商品を強化する」(ニチレイの大櫛顕也社長)など、原料高の転嫁と消費者の購買意欲とのバランスに細心の注意を払う動きがみられる。
メーカー、小売り、消費者の均衡点はなお見通しづらい。
所見
サントリーが値上げるするなら、キリンやアサヒなど他のメーカーも値上げするだろう。
20円の値上げは大きいが、
消費者は受け入れるか、それとも節約思考が進み、またメーカーが値下げに追い込まれるか。