金融庁は高い利回りをうたう仕組み債を個人投資家に販売する金融機関に対し、手数料などの顧客が負担するコストの説明を義務付ける方針だ。
販売時にどれだけ手数料がかかっているか内訳を示し、商品がうたう利回りがコストに見合うものか判断できるようにする。
金融界では自主規制の動きもあるが、トラブルが増えるなか、法律による規制が必要と判断した。
政府は近く金融商品取引法などの改正案を閣議決定する。
金融庁は今通常国会での成立と2024年の施行を目指している。
岸田文雄首相は「資産所得倍増プラン」を掲げ、少額投資非課税制度(NISA)を拡充し、貯蓄から投資を促進する計画だ。
金融庁はリスクやコストが不透明な金融商品販売への規制を強化し、安心して投資できる環境をつくる。
新ルールは顧客の知識・経験や財産の状況、投資目的に応じて、顧客が理解できるように説明することを法律上義務づける。
これまでは理解度に応じて説明する義務はなく、投資初心者にも書面を交付すれば販売できた。
金融機関に投資家の不利益につながる可能性のある情報の開示も求める。
具体的には①顧客が支払う費用のうち、販売会社が組成会社から受け取る手数料の割合②組成会社や販売委託元との資本関係③他商品と比べてその商品を販売した場合の営業員の業績評価上の取り扱い――の3つの情報提供を義務付ける方向で検討している。
投資家が支払う手数料が、組成会社と販売会社の収益源となっている。
金融庁のリポートによると、実質的なコストは年率8〜10%に上るという。
リターンの平均は3.2%で、リターンに見合わないコストを負担している可能性がある。
さらに、早期償還の仕組みを使って繰り返し手数料を得ているケースも多い。
リスクについて十分な説明もなく退職金の大半を仕組み債に振り向けるよう勧められたなどの苦情も出ている。
自主規制団体の日本証券業協会は対策に乗り出し、加盟各社に情報開示を要請していたが、コスト開示に慎重な金融機関が少なくない。
米国は、販売会社に対して投資商品を推奨する際に顧客が不利益を被る可能性のある情報を提供するよう義務付けている。