2023年春に卒業する大学生の採用選考が1日解禁され、大手企業を中心に本格的に面接が始まった。
内定取得も就活継続が半数以上
新型コロナウイルス禍の収束を見据え、各社採用意欲を高めている。
民間調査によると、5月時点で内定を得ていても就職活動を続ける学生は半数以上にのぼる。
売り手市場が強まるなか、企業は内定者の引き留めに苦心する。
3年ぶり総合職採用、全日本空輸(ANA)
3年ぶりに総合職の新卒採用を再開した全日本空輸(ANA)は1日、オンラインの1次面接を始めた。総合職の採用予定人数は55人程度と100人を超えていたコロナ禍以前からぐっと絞る。
片桐伸樹・人事部担当部長は「新しいANAをつくりたいという強い気概を持った人に入社してもらいたい」と期待する。
オンライン面接が主流
損害保険ジャパンはオンラインで1次面接を始めた。22年卒の選考は最終面接まで全てオンラインだった。
23年卒は最終面接のみ対面の予定だ。
4月に持ち株会社制に移行したパナソニックホールディングス(HD)は最終面接までオンラインで対応する。全体の採用数は大学・大学院卒が800人、高専・高校卒は300人の計1100人と前年並みを計画する。
採用拡充の企業も
採用体制を拡充する企業もある。「ガスト」などを運営するすかいらーくグループでは150人の採用を計画する。22年実績に比べ約8割増える。
目標人数が大きく増えるため6月から採用担当者を増やす。
海外から日本に留学している学生を対象としたイベントでも求人募集を出し、多様な人材の採用に意欲的だ。
多様な人材採用の工夫
三井住友海上火災保険はユニークな考え方を持つ学生を積極採用しようと、面接官に中途入社の社員や社外人材を据える取り組みを始めた。
多様な目線で評価し、「自社にあわない」という理由だけで落とさないようにするためだ。
オンラインの説明会や面接はコロナ禍を機に広がった。学生からは「先週まで英国に交換留学していたが、選考に参加できてオンライン面接の利点を感じている」と歓迎の声は多い。
売り手市場、学生との関係構築が重要
半面、オンライン慣れへの課題を感じる企業も出てきた。
1日から対面形式の面接を始めた東京電力HDの担当者は「学生との関係構築に苦労している」と話す。原則オンラインで採用選考をする日立製作所も「対面での採用活動を拡大するタイミングが課題だ」と悩む。
無事に採用できても企業の悩みは尽きない。就職情報大手のディスコによると、5月時点の内定率は65%だった。売り手市場を映し、内定を得ていても就職活動を続ける学生は半数以上もいる。アパレル大手のアダストリアの担当者は「複数内定を持っていることを前提として個別面談をしてフォローする」と話す。
三井物産は部門の説明会や配属希望面談を開き、学生にも仕事へのイメージが湧きやすいように試みる。
JFEスチールは製鉄所見学や社員との懇談会の場を設け、内定者が会社の雰囲気を把握できるよう工夫する。
所見
企業はコロナ禍でも人材不足。
新卒は売り手市場となるが、新卒が強い時代はいつまで続くか。
中途市場がもっと拡大しなければ、やはり『学歴』社会は継続する。