所得が低い人は、生きるために必要なモノ(食料、エネルギー等)に収入を割く割合が多くなる。
高所得者は、教育や娯楽などの物価が上がっていない項目にも収入を多く割いており、影響が小さい。
物価高によりますます、格差が広がるのか。
低所得ほど物価高の影響
「体感物価」が所得の低い層ほど上昇している。
7月の物価上昇率を世帯年収別に5段階に分けてみると、最も低い層は前年同月比2.7%に達した。
年収が多くなるほど物価上昇は鈍くなり、最も高い層は2.2%だった。
資源高に端を発する足元のインフレは、エネルギーや食料など生活必需品への支出割合が大きい家計に特に重くのしかかっている。
総務省が19日発表した7月の消費者物価上昇率は総合で2.6%と、消費増税後の2014年10月(2.9%)以来7年9カ月ぶりの水準に達した。
変動の激しい生鮮食品を除くと2.4%だった。
実際に消費者が体感するインフレの度合いは一様ではない。
総務省が勤労者世帯の収入階層別に5段階で分析したデータによると、総合の物価上昇率は所得が最も低い層(年収463万円未満)は2.7%と、前月の2.4%からさらに高まった。
高所得ほど物価上昇率は低い
所得が多いほど、物価上昇率は低い。
年収が中程度の606万~751万円の世帯は2.4%、最も高い962万円以上の層は2.2%だった。
低所得層と高所得層の差は0.5ポイントとデータを遡れる10年以降で最大になった。
統計上の物価は、消費の支出の割合で重みづけして計算するために違いが生じる。
足元で価格の高騰が目立つ食料やエネルギーにお金を使う比重が大きい家計ほどインフレを体感しやすい。
支出の比重をみると、低所得の世帯は食料が26%、光熱水道が8%を占める。
それぞれ中所得層は25%、6%、高所得層は24%、5%だ。
現在の計算上の基準年である20年に比べ、足元で比重の差がさらに広がっていれば、低所得層の体感物価が数字以上に高まっている可能性もある。
体感物価は2月までは収入による違いはほとんどなかった。3月以降に差が開き始めた。
ロシアのウクライナ侵攻で資源高に拍車がかかったためだ。
国内のインフレはエネルギー、食料
今の国内のインフレは、海外発のコスト高の影響が大きい。
7月の全体の物価上昇率をみると、エネルギー関連は16.2%と2桁台の伸びが続いた。食料は4.4%と、前月の3.7%からさらに加速した。
旅行や映画鑑賞など教育娯楽の物価上昇率はなお0%台で推移する。
こうした生活必需品以外の分野への支出は高所得層の方が多く、体感物価の差につながる。
家計の負担も体感物価に応じて増す。
低所得層は貯蓄も少ない傾向があり、生活必需品の支出が増えれば不要不急の消費を削る必要に迫られる。
生活防衛色が強くなると、景気の下振れ圧力になる。
7月の内閣府の消費動向調査によると、「暮らし向き」の指数は全体として2カ月連続の下落で28.4と、新型コロナウイルス禍当初の20年5月以来の低水準になった。
特に年収550万円未満の世帯は7月として統計を遡れる04年以来最低の水準に沈んだ。
年収が比較的高い層は落ち込みが目立たず、家計の心理も格差が広がっている。
政府の物価高対策でガソリン元売りへの補助金や、小麦の民間への引き渡し価格の据え置きなどを打ち出している。
バラマキを避けるには、より影響の大きい世帯に的を絞るなど効率的な対策の検討も欠かせない。