東京証券取引所が70年ぶりに現物株取引の終了時間延長に乗り出す。午後3時までとしている取引時間を午後3時30分とし、早ければ2024年秋に計画する東証の売買取引システム「アローヘッド」の更新に合わせて開始する。
取引時間が延びるメリット
取引時間が延びることで投資家が東証で売買する機会は増える。アジア市場などで起きたイベントを織り込みやすくなり、海外市場や取引時間の長い私設取引システム(PTS)へ流出する取引の取り込みにつなげる。
議論が始まったのは、2020年10月に発生した東証の大規模システム障害。全銘柄の売買が終日停止し反省から、取引時間を少しでも検討をすることを目的に検討を進めてきた。現状の東証のシステムでは、障害の箇所を修正しても再起動に約3時間を要する。実質、午前中に復旧しなければ、当日中の取引を再開できない。
過去3度、時間延長の議論も見送りに
株取引の売買を活性化しよと、東証は2000年、2010年、2014年の3度にわたって時間延長を模索したが、業務の負担増を警戒する大手証券などの反発で実現しなかった。
金融商品の販売会社や証券会社では実務面の負担が重くなる。例えば、投資信託の基準価格は組み込まれた個別銘柄の終値が確定したから算出している。
30分延長しても海外に見劣り
東証の取引時間は世界的に短く30分延長しても見劣りする。
- 東京:9時〜15時30分(11時30分〜12時30分休憩) 5.5時間 ※延長後
- 香港:9時30分〜16時(12時〜13時休憩) 5.5時間
- 韓国:9時〜15時30分 6.5時間
- ニューヨーク:9時30分〜16時 6.5時間
- シンガポール:9時〜17時(12時〜13時休憩) 7時間
- ロンドン:8時〜16時30分 8.5時間
時間延長だけでは世界から投資を呼び込めない
海外から人材や投資が集まる国際金融都市に向けて市場の魅力を高めるには、取引時間の延長だけでなく多方面の取り組みが必要になる。
銀行免許を取得して事業展開する2020年時点の外国銀行の数は香港の約160行、シンガポールの約140行に対し東京は60行程度。
英語を話せる人材の不足や行政機関の対応、相対的に高い法人税率など海外の人材や投資家を呼び込む上で課題は多い。
そして、市場の活性化は有力な投資先があるかが重要。有力な投資対象となり得るスタートアップの育成など、企業の価値向上への道のりも半ば、日本では企業価値が10億ドル(約1100億円)以上の未上場企業であるユニコーンの数が少ないことが指摘されている。
2021年4〜6月のスタートアップへの投資額は世界で1,571億ドル(約18兆円)と前同比2.2倍となった。日本での投資額は8億ドルとアメリカの1%の水準にとどまる。
東証は2022年4月に市場区分を再編し実質的に最上位の「プライム」上場の企業にはESG(環境・社会・企業統治)の情報開示を充実させるよう求めるなど、より高いハードルを課す。
取引所のルールというハード、投資先というソフトの両輪が回って、初めて市場改革は進む。
所見
株取引は電話受注ではなく、全てネット購入にすれば、取引自動化にできないのでしょうか。自動化できれば、取引時間は1日中できそうに思える。
今のアナログな方法も含めて取引時間を延長すると、証券や銀行での業務負荷が増える。働くサイドとしては、勘弁してほしい。
取引時間の延長をしても、少子化が加速し、スタートアップの企業も育ちにくい日本市場は海外から相手にされないでしょう。