10/8、経済協力開発機構(OECD)加盟国を含む136カ国が最終合意したデジタル課税は2023年の導入をめざす。
OECDは年間約1250億ドル(14兆円)の利益に対する課税の権利を世界に配分できると見積もる。「国際的な課税ルールはより公正で機能的なものになる。
多国間主義にとっての大きな勝利だ」とOECDのコールマン事務総長は合意を強調した。
巨大IT企業などによる「富の寡占」の是正へカジを切る歴史的合意であるが、具体策には課題も残っている。
デジタル課税とは
デジタル課税は、店舗など物理的な拠点が国内にない企業でも、その企業のサービスの利用者がいれば税当局が法人税を課税できる仕組み。
約100年前に定めた工場や店舗などの物理的拠点を課税の根拠にする国際課税の原則を転換する。売上高が200億ユーロ(2.6兆円)を超す多国籍企業のうち、利益率が10%超の企業を対象にする。「デジタル課税」と呼ばれるもののIT企業以外も対象になる。
仕組みは、売上の10%超す部分を超過利益とみなす。超過利益の25%に課税する権利を、その企業のサービスや商品の利用者がいる国・地域に売上高などに応じて配分する。
大枠としてアメリカ企業の利益を新興国に配分する構図になる。課税対象の条件に合う企業を、QUICKデータを元に試算すると、80社程度が該当し4割がアメリカ企業だった。アップル、フェイスブック、グーグルのほかメルクやファイザーなどの製薬大手も該当した。
次いで多いのは中国でネット大手のテンセントなど10社程度、日本はNTTやKDDIなどが該当した。
【デジタル課税の仕組み】
売上高200億ユーロ、利益率10%超の多国籍企業(100社程度想定)に課税
10%を超える利益 (超過利益) | 75%分は 通常通りの課税 | 25%に対して デジタル課税(売上高に応じて市場国に配分) |
利益率10%まで (通常利益) | 通常通りの課税 |
【デジタル課税の対象】
- アメリカ:43.2%(グーグル、フェイスブックなど)
- 中国:13.6%(テンセントなど)
- 日本:7.4%(NTTなど)
- フランス:7.4%
- 香港:6.2%
- その他:22.2%
デジタル課税はGAFAを抱えるアメリカが納得できるかが肝だった。最終合意では欧州など一部の国が導入する独自のデジタルサービス税を廃止することで折り合った。
今後は条約発効前でも新たな独自のデジタル分野への課税をしないことも合意文書に明記した。速やかな凍結・撤廃を求めていたアメリカに配慮した形だ、それをもって、GAFAが参加するアメリカ情報技術産業協議会(ITI)は今回の最終合意を「支持する」と発表した。
法人税の最低税率
デジタル課税と同時に議論してきた法人税の最低税率は15%で決着。OECDは税収増は世界で1500億ドル(約17兆円)と試算。制度設計では税優遇などで製造業を誘致してきた新興国への配慮がある。工場などの有形資産や従業員への支払い分の給与5%を課税対象から除外することを認める。移行期間を5年から、最終合意では10年に延ばした。
今回の合意内容では多国籍企業の税逃れ阻止の効果は限定的だとの声もある。「10年もの移行期間など抜け道があり、見かけ倒しだ」と批判もある。
所見
企業活動のグローバル化が進むと、税制もグローバルに統一しなければいけない。今回の最低法人税15%、デジタル課税の合意は遅過ぎたぐらいだ。
対象の企業が、日本は7%しか無いのが、世界に遅れを取っていたことが、よくわかります。