妊娠や出産の時期によって法律上の父親を決める「嫡出推定」制度を変更する民法改正案が8日、参院法務委員会で全会一致で可決した。離婚から300日以内の出産でも女性が再婚していれば現夫の子とみなす例外を設ける。
10日にも参院本会議で可決・成立する見通しだ。現行法は離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定する。父子に血縁関係がなかったとしても戸籍上は親子とみなされるため、母親が出生届を出さず子が無戸籍になるケースが少なくない。
法務省によると8月時点の無戸籍者793人のうちおよそ7割は嫡出推定を理由に出生届が出されなかったことが原因だった。
無戸籍者になると日常生活に支障が生じる。運転免許などの資格やパスポートの取得、就職などが困難になる事例が指摘される。
改正案は母親が再婚した後に生まれた子は例外的に現夫の子と扱うようにする。嫡出推定の見直しとあわせて女性が離婚後100日間は再婚できない規定を撤廃する。
母や子が事後的に嫡出推定を否認できる仕組みも新設する。現行法は否認できないため母が出生届提出をためらい無戸籍の子ができる要因になっていた。改正案は子の出生後3年以内なら否認の訴えを提起できると記した。
夫も子の出生を知った時から3年以内は否認を訴えられるようにする。現在は1年以内に定めている。
改正案の審議では無戸籍の解消につながらないとの主張が野党などから出た。「離婚から300日以内に生まれた子は前夫の子」という規定は維持し、母が再婚しなければ子の父は前夫と推定され続けるためだ。
無戸籍者を支援する長谷川京子弁護士は「母が再婚せず父親が定まらない場合でも子の戸籍をつくれる制度を設けるべきだ」と訴える。
参院法務委は民法改正案の採決で「無戸籍者問題の解消に資するかを継続して検証し必要に応じて嫡出推定制度などのさらなる検討を行う」との付帯決議をまとめた。
改正案には親権者に子どもを戒めることを認める「懲戒権」の削除も盛り込んだ。「しつけ」を口実に虐待が正当化されかねない点に配慮した。体罰や「健全な発達に有害な言動」も許されないと明記した。