2022年の株式相場は米連邦準備理事会(FRB)の金融政策を手掛かりに荒れる場面が目立った。
それでも投資信託市場への資金流入は高水準を維持している。
22年はどのようなファンドが純資産残高を伸ばしたのだろう。
22年は多くのファンドが運用で苦戦を強いられた。
20年春のコロナショック後に大きく上昇してきたグロース(成長)株は、FRBが金融引き締めを進めた反動で年初から大幅に値下がりした。
歴史的な高インフレに対応するため各国中央銀行が利上げをしたことで債券価格が下落。
株式や債券など複数の資産に分散投資するバランス型投信にも逆風となった。
もっとも、ファンドへの資金流入は続いており、国内公募の追加型株式投信(上場投資信託=ETF=を除く)は11月末時点で24カ月連続の流入超となっている。
21年末と比較して残高の増加額が大きいファンドをランキングしたところ、首位から4位までの上位を「つみたてNISA(積み立て型の少額投資非課税制度)」の対象で低コストのインデックス型(指数連動型)が並んだ。
残高を最も伸ばしたのは三菱UFJ国際投信が運用する低コストのインデックスファンドシリーズの「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」だった。
年初来の資金流入額はQUICKの推計値ベースで6817億円、年初来の騰落率はわずかにマイナスだったが、1年足らずで7000億円弱の残高を積み増した。
2位も同じシリーズで、先進国と新興国の多くの国・地域に投資する「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」で、残高は3840億円増えた。
三菱UFJ国際投信が運用するこのシリーズはコツコツと積み立て投資をする層の支持を集めている。
3位と4位は米バンガードが運用する米国籍ETFを通じて米国の株式に投資するタイプだった。
コストの低いインデックス型ファンドを活用して積み立て投資をする流れは今年の波乱相場でも減退していない。
投信残高のうちインデックス型のシェアは10月末に25%を超え、拡大が続く。
5~10位は証券会社や銀行が主に対面で販売するアクティブ型(積極運用型)だった。
5位の「フィデリティ・世界割安成長株投信 Bコース(為替ヘッジなし)」や7位の「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」など、今年はバリュー(割安)株に注目が集まった。
年初来の騰落率も相対的に堅調だった。
一方、残高を減らしたファンドも調べてみたところ、グロース株への投資比率が高く、基準価格が大幅に下落したアクティブ型が目立った。
最も残高を減らした「グローバル・プロスペクティブ・ファンド」と4番目に減らした「デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド」は、「破壊的イノベーション銘柄」への投資で一世を風靡した米アーク・インベストメント・マネジメントが助言するファンドだった。
「山高ければ谷深し」の相場格言を象徴するかのように年初来の下落率は5割を超える。
ファンドを選ぶ際は過去の上昇率に目が奪われがちだが、値動きがリスク許容度の範囲内かどうかも改めて確認したい。
三菱UFJ国際、残高首位に
投信(ETFを除く国内公募追加型株式投信)の残高を運用会社別に集計したところ、月末ベースで22年10月末に三菱UFJ国際投信が野村アセットマネジメントを抜いて首位に立った。
三菱UFJ投信と国際投信投資顧問が合併した当時の業界4位から躍進した。
三菱UFJ国際投信の残高増に寄与したファンドの信託報酬は著しく低い。
11月末時点の残高をベースに運用会社が受け取る信託報酬額(年額)を試算してみると、アセットマネジメントOneや野村アセットマネジメントが三菱UFJ国際投信を上回る。
信託報酬の低下による収益力の悪化は資産運用業界全体の課題となっている。
改善策として、低コストでも残高をさらに積み増す、コストが高くても投資家が納得する良質で長期投資に資するアクティブ型を供給する、小規模ファンドを併合もしくは繰り上げ償還してファンド本数を減らすなどが考えられる。