岸田文雄首相とバイデン米大統領が23日、初めての本格的な会談に臨む。
日米首脳の個人的な関係構築は両国関係の基盤になってきた。首脳同士がどのように会談を重ねてきたかは同盟関係にある日米の距離や懸案の状況を示す。
平成以降に就任した18人の首相と6人の米大統領の2国間会談の状況を外務省の発表や過去の記事をもとに調べた。
最長は安倍元首相、トランプ前大統領
合計の時間が最も長かったのは安倍晋三元首相とトランプ前大統領の計20時間だ。
両氏は回数も14回と最多だった。集計には含めていないが安倍氏はトランプ氏が就任する前の2016年11月に電撃訪米して会談し、親密な関係を築いた。
両氏は在職期間が重なるのは3年半ほどだ。1年間あたりの会談回数をみると3.8回になる。おおむね3カ月に1度は会談した計算で、頻度も歴代トップクラスといえる。
共通の趣味のゴルフを重ねるなど親密さを誇った。その半面でトランプ氏の対日要求への対処も課題だった。
同氏は在日米軍の駐留経費の負担増を日本側に要求したり、対日貿易赤字を問題視したりする発言を繰り返した。
小泉元首相、ブッシュ元大統領が2番目
「蜜月」といわれた小泉純一郎元首相とブッシュ元大統領(第43代)は15時間で2番目に長い。
回数は安倍、トランプ両氏に次ぐ13回に及んだ。06年にともに故エルビス・プレスリーの旧宅を訪れるなど仲の良さを前面に出した。
個人的な強固な関係は日米関係に結びつく。ブッシュ氏が01年の米同時テロ以降に打ち出した「テロとの戦い」を小泉氏は後押しした。独仏などが否定するイラク戦争を一貫して支持した。
安倍、オバマは5位
歴代の首相で在職最長の安倍氏はオバマ元大統領とも9回会談した。通算10時間は5位につける。
オバマ氏の外交スタイルは「ビジネスライク」と評された。個人的な関係が前面に出たわけではない。
一方で日米間における安全保障や経済分野の大きな懸案があった時期に重なる。安倍政権は15年9月に安保関連法を成立させた。
経済分野では環太平洋経済連携協定(TPP)に関する日米協議が13年8月に始まり、首脳会談でも度々議題になった。
首相就任後、2ヶ月以内の首脳会談が多い
日本で新しい首相が就任して最初の日米首脳会談までの期間は2カ月以内が多い。日本は日米同盟を外交・安保政策の基軸としている。まずは米大統領と会談し、ほかの国との首脳外交に入る流れが目立つ。
日本の民主党政権をみても鳩山由紀夫元首相がオバマ氏と会談したのは就任1週間後だった。続く菅直人、野田佳彦両元首相も国際会議の機会を利用して就任後20日程度で首脳会談にこぎつけた。
新型コロナウイルス禍で海外渡航が難しい状況にあった直近の菅義偉前首相と岸田首相は例外といえる。
菅義偉氏が訪米してバイデン氏と会談したのは就任から7カ月後の21年4月16日だった。コロナに加え、トランプ氏からバイデン氏に政権が代わる過渡期にあったことも影響した。
岸田首相とバイデン氏との今回の会談も首相の就任から7カ月後にあたる。
首相は21年11月、英グラスゴーでの第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)でバイデン氏と短時間言葉を交わした。
当初21年中の訪米を模索した。米国側で大型歳出法案を巡り民主、共和両党が対立した事情などで実現しなかった。
所見
日米首脳会談は長ければ良いとは思わないが、
「米大統領と仲が良い」というイメージは国防上も大事。
米国と良好な関係を築くことが、総理大臣の大きな仕事。夏の選挙にも影響するだろう。