岸田政権は分配重視、改憲に慎重なシニア層の支持を伸ばす。
一方、改革不足で若者の支持は減る。
野党第一党の立憲民主が、弱いことも要因。
今年の参院選2022は、また与党勝利か。日本を作っていく若者の票を重くすべきだと思う。
岸田政権支持はシニア層で伸び、若者伸びず
参院選は7月10日の投開票に向け与野党の論戦が続く。
日本経済新聞社の世論調査を分析すると岸田文雄政権になってシニア層で自民党支持率が高まったことが浮かぶ。
一方で安倍晋三、菅義偉両政権に比べて若い世代は伸びていない。2021年10月の政権発足から続く高い水準の支持には死角も潜む。
岸田内閣の足元支持率は60%
岸田内閣の支持率は直近の17~19日の調査で60%だった。5月から6ポイント下がったものの、発足直後の59%と同じ水準にある。
自民の支持率も4~5割台を保つ。
中高年層の支持の高まりが背景にある。第2次安倍内閣が発足した12年12月以降の自民支持率について、年代別に安倍、菅、岸田の各政権下の平均を出した。
40歳代以上は安倍政権から菅、岸田政権へと上昇を重ねている。
50、60歳代は安倍政権で40%台前半だった支持率が6~7ポイントほど高い40%台後半になった。70歳以上も岸田政権で伸びて5割を超えた。
支持率、20代横ばい、30代落ち込む
若い世代は全く異なる。
20歳代は菅政権からほぼ横ばいで推移する。30歳代は菅政権で最も高くなり、岸田政権に入って落ち込みをみせた。
岸田政権の経済政策は当初、分配の印象が前面に出た。これがシニア層の支持拡大につながった可能性がある。
発足直後の21年10月の世論調査で成長戦略と分配政策のどちらを優先すべきか聞くと60歳代は分配の49%が成長の39%を上回った。
18~39歳は59%が成長と答え、分配の31%に差をつけた。
保守的なシニアに支持、改革不足で若者は物足りない
一橋大の中北浩爾教授は「岸田政権は安倍、菅政権に比べ、憲法改正などで慎重な考えが根強いシニア層が支持しやすい」とも分析する。
半面「改革志向が強い若い層は物足りなさを感じているのではないか」と指摘する。
自民は安倍政権下の13、16、19年の参院選で3連勝した。この間は若い世代ほど自民を選ぶ傾向が出ていた。
共同通信の出口調査で比例代表の投票先をみると、20歳代は3回とも自民が4割を超え、いずれも全体の値より高い。
対照的に50、60歳代は一貫して3割台半ばだった。
無党派層が縮み、自民や維新が伸びる
前回19年の参院選からの3年間でほかにどのような変化が起きたのだろうか。
自民以外も含めた政党支持の動向を地域別にみると、都市部の特定の支持政党をもたない無党派層が足元で縮んでいる。
年別の平均で比べると、埼玉、千葉、東京、神奈川の首都圏1都3県の無党派層の比率は19年の3割台半ばから22年は3割弱に減った。
京都、大阪、兵庫、奈良の関西2府2県は9ポイントほど低下した。
この間に支持率を高めたのは自民や日本維新の会だ。首都圏は各5ポイント前後増え、関西は維新が9ポイント超伸ばした。
旧民主党系の地盤が厚い愛知など東海4県は相対的に無党派層の減り幅は小さいものの、同様の現象はみられた。
野党第1党の立憲民主党は受け皿になっていない。旧国民民主党の一部との合流前の旧党だった19年と比べ3地域とも支持は広がらなかった。
与党の自民、公明両党は岸田政権の発足直後の衆院選で勝利した。
自民はシニアの支持層を広げ、さらに無党派の一部も取り込む。
物価上昇がシニア層支持の逆風
それでも隙はある。シニア層の分配政策への期待は生活品の価格上昇や年金の減額で逆風に転じかねない。
直近の内閣支持率の下げは物価上昇が響いたとみられる。
野党の立民や維新などは対策が不十分だと訴え、消費税率引き下げといった主張を掲げる。
今回の参院選は有権者の政権運営の評価を反映した岸田政権で最初の「中間選挙」の性質を帯びる。
政権に復帰して10年弱がたった自民の支持構造の変調がどう働くか注目される。