KDDIが通信障害対策に今後3年間で500億円を投資することが1日、分かった。
人工知能(AI)技術を活用した自動復旧システムの開発や、通信機器をソフトウエアに置き換える「仮想化」技術などを導入する。
2日に開く決算会見で発表する見通し。7月の大規模障害を受け、ネットワークの運用体制を抜本的に見直す。
KDDIが7月に起こした大規模な通信障害では、「輻輳(ふくそう)」と呼ばれるアクセスの集中で処理能力を超え事態が深刻化した。
復旧作業は61時間半にわたり、全国で延べ3091万人以上に影響が及んだ。
一部の音声交換機など障害の原因となっている機器の特定やネットワークからの切り離しに時間を要した。
今回取り組む再発防止策ではAIを活用し、異常が発生した設備や障害の原因を迅速に特定し、復旧作業を自動化する技術の開発を進める。
障害試験や実際の障害で得たデータをAIに学習させ、障害検知や復旧作業の精度を高める。
7月の通信障害では、携帯電話ユーザーのほか、コネクテッドカー(つながる車)やATMなど幅広い産業でサービスに支障が出た。
あらゆるモノがネットにつながる「IoT」時代の到来でネットワークは複雑になっており、AIで復旧作業を効率化する。
NTTドコモも2021年10月に起こした大規模障害を受けて、地震など災害発生時の状況把握などにAIを生かし始めている。
KDDIも一部で障害検知などに活用してきたが本格導入に向けて開発を前倒しする。
通信機器をソフトウエアで代替する仮想化技術の導入も進める。
仮想化は物理的な専用機器に頼らず、汎用のサーバーを活用しソフトウエアでネットワークを制御する技術だ。
音声交換機などを汎用サーバーで代替することで、通信障害時の自動制御や機器の交換など復旧作業をしやすくする。
KDDIは13年に大規模障害を起こした際には、バックアップ設備の増強などに300億円を投資した。
今回の500億円はそれを大幅に上回る。
総務省は10日までに行政指導を受けた対応状況の報告を求めている。
再発防止策には輻輳制御の設計見直しや異常検知ツールの開発などを盛り込む。
利用者目線での情報発信を強化するため、社内横断的な対外情報発信組織「お客さま広報班」も新設した。
KDDIによる再発防止策とは別に、総務省主導で通信障害時にネットワークを切り替える「ローミング」の導入に向けた議論も始まっている。
8月にはNTT西日本、9月には楽天モバイルで電気通信事業法上の「重大な事故」にあたる通信障害が相次いだ。
業界全体でネットワークの安定性を高める対策が急務となっている。