新型コロナウイルス禍で3回目の年末を控え、企業や個人が忘年会を開く意欲がじわり高まってきた。
民間調査で2022年末に「開催する」とした企業は前年より多い約4割に達した。
ただ、足元で感染拡大「第8波」の懸念が強まり、少人数での開催や利用時間の前倒しが目立つ。
ホテルや外食企業は限られた需要を取り込もうと、メニューやサービスの拡充を急いでいる。
「3年ぶりに忘年会を予約する団体もあり、久しぶりににぎやかな年末になりそうだ」。
東京ディズニーリゾートに近いシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル(千葉県浦安市)の担当者は声を弾ませる。
忘年会の予約や問い合わせが新型コロナ禍以降で最も多いという。
東京商工リサーチが10月に実施した調査(約4610社回答)によると、22年年末の忘年会と翌年の新年会を「開催する」とした企業は39%と前年の開催意向に比べ9ポイント増えた。
実際の飲食店来店人数も前年を上回る水準で推移する。
飲食店予約管理サービスのトレタ(東京・品川)によると全国の飲食店約4200店の22年11月21~27日の来店客数は21年同期比6ポイント増えている。
来店人数はコロナ禍前とは異なる。来店人数が4人以下グループ・個人の来店比率はコロナ禍前を3~7ポイント上回ったが、5人以上では人数が増えれば増えるほど、来店数は下回る。
来店時間帯も午後3~5時はコロナ禍前を27ポイント上回った一方で、午後5~8時は11ポイント減、午後8~翌0時は26ポイント減だった。
少人数開催など新たな忘年会スタイルへの対応に企業は知恵を絞る。
横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ(横浜市)に入居する一部の飲食店は週末夜の開店時間を従来より30分早めて午後5時からとした。
新型コロナ禍前は午後7時開始が多かったが、午後5時台に予約が集中していることに対応する。
コロナ禍前は「飲み放題」を付ける利用がほとんどだったが、今年は酒類は控え食事をメインとする利用希望が増えた。
酒類を提供せずに2品程度料理を増やした「プレミアムコース」を追加した。
コロワイド傘下のレインズインターナショナルは焼肉店「牛角」で少人数で短時間利用したい消費者向けにもメニューを拡充する。
12月5~11日に一定条件を満たした公式アプリ会員を対象に、生ビールを通常価格の半額の275円で提供するなど割安な目玉商品を用意する。
ワタミは12月の忘年会の予約数が前年同月比で8倍となったという。
ただ、19年12月比では6割減と厳しい状況が続く。
運営する「ミライザカ」や「鳥メロ」では23年1月まで、コロナ感染などが理由の場合は前日までに連絡すれば忘年会のキャンセル料を無料とする。
企業は改めて感染対策を徹底している。
ホテルニューオータニ(東京・千代田)の宴会場では参加者同士の距離を1メートル以上確保するように提案している。
スタッフと顧客の接触回数を減らす目的で、食事の提供方法も変えるなど工夫をこらす。
宿泊や外食各社にとって、大々的な忘年会開催の呼びかけが難しい環境は変わらない。
コロナ禍が長引き飲食業界の経営破綻が一段と増えている。
感染対策を徹底しながら、かき入れ時の忘年会で客を集められるかも生き残りへの課題となっている。