人生のパートナーを探す場として、結婚相談所を選ぶ20代がじわりと増えている。
マッチングアプリでの婚活を経験したうえで、時間効率を追求する「タイムパフォーマンス(タイパ)」や相談相手を求め、結婚相談所の門をくぐるケースが多いようだ。
婚活に対する20代の意識を探った。
やりとりにうんざり「趣味の時間削られたくない」
「今週末はどう?」「ちょっと無理。金曜日なら空いてる」「場所はどのあたりがいいですか?」。
婚活アプリを利用していた都内の女性(27)は、相手と実際に顔を合わせるまでのこんなやりとりにうんざりしていたという。
「連絡をとるために趣味の時間が削られるのは、タイパが悪い」
「もっとサクッと出会いたい」と、昨夏、婚活の場を結婚相談所に切り替えた。
初回の対面日時や場所は相談所が設定するため、相手とだらだらとやりとりする必要がない。
「カウンセラーを通すのでお断りもしやすい。結婚への本気度が高い人が多く、効率的に相手と出会える」と女性は話す。アプリに比べ費用はかかるが「時間が有意義に使える」という。
新型コロナウイルス禍で対面での出会いが減る中、婚活アプリや結婚相談所といった「婚活サービス」を利用する人は増えている。
リクルートブライダル総研の「婚活実態調査」によると、2021年の婚姻者のうち、約15%が婚活サービスを利用して結婚した。
20代独身者の利用経験割合を見ると、最も多いのはネット系婚活サービス、いわゆる婚活アプリで、22年では約2割が利用している。
結婚相談所は1割未満にとどまるが、17年と比較すると男性は2ポイント、女性は0.5ポイント上昇し、じわじわと増えつつある。
相談所大手の20代入会者数、3年前の4.7倍
結婚相談所大手のIBJでも20代の入会が伸びている。
運営する日本結婚相談所連盟に加盟する結婚相談所約3500社の入会動向を分析したところ、22年1~10月の入会者数は、19年同時期に比べて4.7倍になった。
背景には、冒頭の女性のように婚活サービスをタイパで選ぶ意識がある。
結婚相談所「パートナーエージェント」を運営するタメニーが22年に実施した調査では、20代の入会者の8割以上が婚活アプリの利用経験があり、そのうえで3人に1人は結婚相談所で婚活を始めたきっかけとして「短期で結果を出したい」と考えていた。
見知らぬ人と表面的な会話を繰り返すことによる「マッチングアプリ疲れ」もあるようだ。
今春、アプリで出会った男性と結婚する横浜市在住の女性(26)は、これまでに4種類のアプリを試した。
気になる相手と送り合う「いいね」を1日に100件以上受け取ったことも。
「その中からやりとりする人を選んで、一人一人と同じ会話を繰り返すことに疲れてしまった」。
一時は婚活を中断したこともあったという。
婚活アプリを利用している関東在住の男性(28)も「面白い会話をし続けないと、会うところまでたどり着かないので気が抜けない」と話す。
恋愛経験少なく「相談相手」求める人も
22年6月に政府が公表した「男女共同参画白書」で、20代の独身男性の約4割が「デート経験なし」という調査結果が出たことが話題になったが「恋愛に自信がない」との思いから結婚相談所を選ぶ人もいる。
結婚相談所でパートナーを見つけた男性会社員(29)は「恋愛経験がなかったので、相談に乗ってほしいと思い、相談所を選んだ」と打ち明ける。
「婚活の進め方やデートの仕方など、細かいことまで相談できてよかった」
リクルートブライダル総研の落合歩所長は、若い世代の婚活について「失恋後の関係性を気にして、同じコミュニティー内での恋愛を避ける傾向が強い」とも指摘する。
身近な出会いは避けたい、でも知らない人との表面上の会話に時間をかけたりするのも嫌――。
そんな20代にとって結婚相談所は「合理的に出会える。
サポートがあることで婚活が進展しやすい」と落合所長。
「利用者が自らの特性に合わせてサービスを使い分けたり、併用したりしている」と分析する。
タイパ重視の流れを意識し、面倒なやりとりを省いたマッチングアプリも出てきている。「Dine(ダイン)」は、相手とのメッセージ交換なしで食事デートができる。お互いが公開しているプロフィルに「リクエスト」を送ってマッチングが成立すれば、2人の都合のよい日程をアプリが自動的に調整する。利用する20代の女性は「出会うまでの時間は極力短くして、その後のお互いを知るための時間に使いたい」と話す。
出会い後は時間かけ交流を
一方で、日本時間学会会長でもある千葉大の一川誠教授(心理学)は「時間効率を追求しすぎると、判断を誤るリスクも高まる。
相手について見えない部分も多く、その後の満足度が高くなるとは限らない」と指摘する。
「出会った後は時間をかけてコミュニケーションを重ねる方がよい」とアドバイスしている。