少子化対策たたき台、政府が明記 出産に保険適用視野
政府が3月末にまとめる少子化対策のたたき台の主な内容が分かった。
柱として児童手当の所得制限撤廃を明記する。
15歳までの受給対象年齢の18歳までの引き上げや多子世帯の増額も掲げる。
将来の課題として出産費用への保険適用を検討する方針も盛り込む。
経済不安を和らげ、希望に応じて子どもを産みやすい環境を整える。
岸田文雄首相は少子化対策の抜本的な強化に向けて、子ども予算を倍増する考えだ。
6月をめどに決める経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で大枠を示す。
一連の対策の具体化には財源の確保が大きな課題だ。
例えば年2兆円程度の児童手当は所得制限をなくすと、千数百億円の増額になるとの試算がある。
他の取り組みも含め、社会保障制度や税制の抜本的な見直しが求められる可能性もある。
児童手当は現在、15歳までの子どもがいる世帯に原則月1万~1万5千円を支給している。
夫婦と子ども2人の場合、世帯主の年収が960万円以上なら5千円に減額し、1200万円を超えたら給付しない。
今回、所得制限をなくし、すべての子育て世帯が手当を受給できるようにする方針を示す。
対象は18歳までに引き上げる。多子世帯への加算も盛り込む。
子どもの数の線引きや増額の幅は4月以降に調整する。
与党内には第1子を1万5千円、第2子を3万円、第3子を6万円とする案もある。
与党と調整し、月内にたたき台をとりまとめる。見直しの時期までは踏み込まない。
出産費用の支援は現在、一時金を支給する仕組みがある。4月からは50万円に上げる。
将来、保険適用の公定価格となれば、医療機関による費用の違いがなくなり、公平な支援を受けられるようになる。
このほか若年層が結婚や出産をためらう壁になっている経済面の不安を取り除く対策を並べる。
男女が一定期間、育休を取得した場合に給付率を手取りの実質10割とする。
働き方による格差の解消を目指し、これまで支援が手薄だった非正規雇用への育休給付や保育所利用の拡大も進める。
保育所は今の制度だと、就労時間が長い正規雇用の働き手のほうが入りやすい。
短時間労働者も利用しやすい仕組みづくりをめざす。
4月に発足するこども家庭庁が2023年度に未就園児を保育所で定期的に預かるモデル事業に取り組み、将来の全国展開を探る。
保育士の配置基準の見直しも掲げる。
いまは0歳児で3人ごと、1~2歳児で6人ごと、3歳児で20人ごと、4~5歳児で30人ごとに1人だ。
保育士をより多く充て、業務負担を軽くする。保育所が十分な保育士を確保できるような制度設計が求められる。
子育て関連の給付が手薄と指摘されてきた非正規労働者への経済的な支援の拡充にも力を入れる。
現在、雇用保険は週の所定労働時間が20時間以上といった適用要件がある。
適用外の人は育休取得時や失業時などに給付を受けられない。
労働時間規定の見直しなどにより加入要件を緩和する案を検討する。