金融庁は今年の秋からメガバンクなど大企業で働く管理職や専門人材を地方の中小企業に紹介する事業を本格的に始める。
「社長の右腕」となる人材を低コストで
金融庁は転職や出向の希望者を専用システムに登録してもらい、地方企業へのマッチングを担う地域金融機関が検索できる体制を整えた。
豊富な経験を持ち、社長の右腕になる人材を中小企業に紹介し、事業改革を後押しする。
本システムは今年の6月に完成し、官民ファンドの地域経済活性化支援機構(REVIC)が管理し、10月に人材紹介業を担う地域銀行と信用金庫、提携人材紹介会社に無料開放した。
現時点のリストでは大手行の行員ら転職や出向の希望者が数百人いる。年齢は30〜60歳代と幅広い。大手メーカーや商社など80社ほどに協力を呼びかけ、徐々に登録数は増えている。
コロナ禍で増える休廃業
コロナ禍の長期化で、地方企業は大きな影響を受けている。2020年に全国で休廃業・解散した企業は2019年比15%増の4万9698件、2000年の調査開始より最多となった。
政府からの支援などはあるが、コロナ禍の収束後に売上が回復する見通しが立たない中小企業も多い。このため追加の借入をためらい、先行きへの不安から休廃業に踏み切るケースも増えている。
経営人材不足
金融庁が中小企業を対象に実施したアンケート(2021年)では「経営人材が不足している」との回答が66.6%にのぼった。(回答「不足していない」32.3%)
経営人材が必要になった場合、誰に紹介してもらいたいか、のアンケートでは「メインバンクやそのグループ会社」との回答が3分の1あった。地方の中小企業では金融機関に経営人材を紹介してもらいたいニーズが強い。
金融庁の狙い
金融庁は大企業人材の紹介を通じ、中小企業の事業転換や事業拡大を後押しする。
今回の事業では地域金融機関が企業側が求める経験や能力を具体的に聞き取った上で該当する人材を紹介し、企業が採用すれば国から補助金が出る。
中小企業にとっては能力が高い人材をより円滑に低コストで採用できることが利点。
大企業にとっても社員のセカンドキャリアの確保は重要な課題の一つ。
メガバンクの場合、役員にならなければ52歳前後でグループや取引先企業に転じるのが通例。「取引先への出向・転職の枠は徐々に細ってきている」という。
これまでの経験を地方の中小企業でいかせれば、それぞれにメリットが期待できる。
もっとも大手企業の転職候補者は東京に集中しており、地方企業への関心が高いとはいえないのが現状。
金融庁は大企業への働きかけを強め、最終的に1万人規模の登録者をめざす。
所見
地方の企業は人材不足、大企業は従業員のセカンドキャリアのダブ付き解消。
双方を解決できる良い企画のように思えるが、50歳を過ぎて地方で、かつ給料を下げて働く気にはなれない。
地方企業は休業・廃業が進んでいるが、だからこそ人口は都市集中になっていくのではないか。
未来を見通しにくい地方の中小企業で働く選択肢はあっても良いが、自分で働き先を選べるくらいにスキルアップが必要。
後、15年。頑張らねば。