米アマゾン・ドット・コムは13日、ネットワーク経由で情報システム機能を使えるクラウドコンピューティングを通じ、文章などを自動でつくる生成人工知能(AI)を提供すると発表した。
クラウドを通じた生成AIの提供は米マイクロソフトや米グーグルも準備する。
業界最大手のアマゾンの参入で、生成AIの利用環境の整備が世界で進む。
アマゾン傘下でクラウド事業を手掛けるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)を通じて、自社でつくった生成AIや新興企業が開発した技術の基盤を提供する。
自社の生成AIは数カ月以内に一般提供を始める。外部の生成AI技術も段階的に利用できるようにするとみられる。
IT(情報技術)サービスの開発を手がける顧客企業は、文章の要約やデザインの自動作成といった機能を組み込みやすくなる。
当初は電子メールやチャットサービスを提供する企業や利用者に文面を自動で作る機能を提供するといった用途を見込む。
顧客企業がIT投資を効率化できるクラウドの世界市場は高成長を続けてきたが、足元では景気減速などの影響で伸びが鈍る。
こうしたなか、マイクロソフトやグーグルは相次いで、クラウドを通じた生成AIの提供を決めた。
アマゾンは外部の新興勢も含めた幅広い生成AIを提供し、違いを出したい考えだ。

生成AIを巡っては米新興企業のオープンAIが2022年11月、質問に自然な文章で回答する「Chat(チャット)GPT」を公開し、世界で利用者が急拡大している。
人間の指示に応じて文章や画像、プログラムを作り出せるため、様々な作業の生産性を高められる期待がある。
AWSのバイスプレジデント、バシー・フィロミン氏は日本経済新聞などの取材に応じ、「あらゆるITサービスが生成AIにより変化することになる」と述べた。
具体的にはデザイナーの使うサービスに組み込んで入力した言葉に基づく画像を自動で作ったり、映画などの映像の一部を自動で制作したりといった活用事例を示した。
技術が未成熟で競争の行方が見通しづらいことから、自社開発だけでなく外部の新興企業とも組むことで多様な顧客企業のニーズに応えるとしている。
瞬時にイラストを作る英スタビリティーAIや、グーグルも出資する米アンソロピックなどが開発するAI基盤も使えるようにする。
アマゾンは個人として活動する技術者を対象に、コード(プログラムを動かす文字列)を書く作業をAIで省力化するサービスを無償で提供する方針も発表した。
利用時間などの制限は設けない。
初期費用や月額利用料を抑えて顧客を囲い込む「薄利多売」の戦略でクラウドの最大手になっており、生成AIでも同様の方針をとる。

米調査会社シナジー・リサーチ・グループによると、22年10〜12月期の世界のクラウド市場におけるAWSのシェアは33%で首位だった。
2位のマイクロソフト(23%)や3位のグーグル(11%)はシェアをじわじわと高めている。
生成AI分野における取り組みが競争の行方を左右しそうだ。
AI開発の中止を求める声が上がるなど技術の急速な発展には警戒論も上がっているが、フィロミン氏は「生成AIはこの数十年で最も革新的な技術の一つ。公平で正確なAIの提供に努める」と述べた。