政府は15日の経済財政諮問会議で2%物価目標に向けた財政・金融政策の役割分担を議論した。
有識者らは、デフレへの後戻りを避けるため、政府と日銀が賃上げ持続の目標を共有するよう提起した。
物価と賃金が安定的に上昇した場合は、日銀が金融緩和政策を見直すことも求めた。
米プリンストン大の清滝信宏教授や東大の渡辺努教授ら有識者を招く「特別セッション」として開催した。日銀の植田和男総裁も出席した。
有識者は、賃金上昇を伴う形での2%目標達成に向け「政府と日銀は緊密に連携し、目標を共有」する必要性を訴えた。
民間議員を務める東大の柳川範之教授が、有識者の意見を踏まえた論点として提示した。
有識者は、中小企業の価格転嫁対策の推進や最低賃金の将来の引き上げの道筋を示すことを政府に提案した。
財政政策は「潜在成長率の引き上げ」に重点を置くべきだとし、生産性向上や脱炭素などの民間投資の呼び水となるよう求めた。
清滝氏は、日銀の異次元緩和の問題点として「1%以下の金利でなければ採算がとれないような投資をいくらしても、経済は成長しない」と指摘。
物価上昇率が1〜2%程度に定着した場合は「量的・質的緩和は解除するのが望ましい」と唱えた。
諮問会議はこれまでも2%目標に向けた進捗を点検してきた。
有識者の提案は、政府・日銀が賃上げで足並みをそろえ、2%目標達成へ向け家計所得など分配面にも目配りするよう求めたといえる。
岸田文雄首相は賃上げは政府の最重要課題だと会議で説明し「企業があげた収益を労働者に分配し、消費、企業投資も伸びる成長と分配の好循環を成し遂げ、分厚い中間層を復活させる」と表明した。
「政府・日銀が密に連携を図りつつ、マクロ経済運営を行う重要性が高まっている」とも強調した。
3月の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合で前年同月から3.1%上昇し高水準が続く。
今年の春季労使交渉では30年ぶりの賃上げ率が見込まれるが、足元は物価高で実質賃金の目減りが続く。
賃上げが途絶えれば景気は冷え込みかねない。
内閣府はこの日提出した資料で、消費者物価などデフレ脱却に向けた指標に触れ「プラス方向の動きが見られるが、デフレに後戻りしないための持続性と安定性を確認していく必要がある」と記載。
先行きの不確実性を示唆した。
日銀は4月28日の金融政策決定会合で、フォワードガイダンス(先行き指針)を修正し、2%目標の実現へ「賃金の上昇を伴う形で」との表現を初めて加えた。