国土交通省は5日、ドローン(小型無人機)の機体が操縦者に見えない状態でも住宅地などで飛ばせるよう規制を緩和した。
「レベル4」と呼ばれる飛行形態が可能になる。
まずは離島への物資輸送や災害救助などで使われる見通し。
街中での商品配送などへの活用は早くて数年後とみられる。
物流業界の人手不足緩和などに役立つと期待される。
同省はドローンの飛行形態を4段階に分けている。
レベル1~3は離島や山間部などの無人地帯か、街中では操縦者に機体が見える範囲での飛行が条件だった。
最終段階のレベル4は5日施行の改正航空法で解禁された。
有人地帯で操縦者が機体を視認できなくても飛ばせる。
レベル4飛行をするには機体の安全性能を国がチェックする「機体認証」のクリアと、操縦者の技能と知識を証明する「操縦ライセンス」の取得が必要になる。
ドローンを配送などに使う事業者は有人地帯を飛行する場合のリスク対策などを盛り込んだ運航管理ルールを定め、事前に飛行計画と合わせて国に提出する。
全ての飛行形態で事故時の国への報告も航空法で義務付けた。
操縦ライセンスの試験は早ければ2023年初めに始まる予定だ。
機体の認証を受ける必要もあるため、同省はレベル4飛行の実現は同年春ごろと想定する。
まず活用が見込まれるのは、離島や山間部への荷物の配送や、災害時の情報収集・避難の呼びかけだ。
農村部での農産品の運搬や橋梁などのインフラ点検、上空からの施設警備といった業務をドローンが担うことも想定される。
国は人口が密集する都市部での飛行許可は早期には出さない方針だ。
機体の安全性を高めて墜落や建物との接触などのリスクをより減らす必要があるほか、飛行経路の下の住民に騒音被害などが予想されるためだ。
桜美林大の戸崎肇教授(航空政策)は「都市部での実用化は25年の大阪・関西万博を目標とする動きもあるが、少なくとも30年ごろには広く普及・発展しているだろう」とみる。
物流業界では人手不足の解消や業務の効率化に期待がかかる。
ただ事業者側には、採算性を確保するために1人で複数台のドローンを操縦できる技術や人材の育成、電波やシステムに不具合が生じた場合にすぐ修理できる体制の構築が求められる。
戸崎教授は「ドローンと他の機体の衝突を防ぐような空域を制御するシステム、操縦者が加入する保険など、作るべき仕組みはまだ多くある」と指摘する。
海外ではすでに都市部でのドローンによる物流事業が始まっている国や、開始のめどが立っている国がある。
米アマゾン・ドット・コムは13年からドローン配送の構想を掲げ、20年に航空運送事業の許可を取得。
年内にもテキサス州の一部などでサービスを始める計画だ。
スイス郵政公社は米国のメーカーと提携し、17年から医療用品の配送にドローンを利用してきた。
19年に2件の事故が相次ぎ、一時的に中断したものの、20年1月より再開。
23年には提携先事業者がより広域でドローン配送サービスを提供する予定だ。