JPモルガン・チェースなどの米大手銀行が経営不安の続く米中堅銀行ファースト・リパブリック・バンク(FRC)への新たな救済策の検討に入ったことが20日、分かった。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルなど米欧メディアが報じた。
増資で財務基盤を安定させる案などが浮かぶが、FRCの株価急落で大手行の損失リスクも高まっており、難しい判断を迫られる。
米欧では金融システム不安がくすぶり、19日にはスイス金融大手のUBSがクレディ・スイス・グループの救済買収で合意した。
米国では中堅銀行のシリコンバレーバンク(SVB)とシグネチャー・バンクの破綻2行について当局が全額預金保護を打ち出したが、破綻する銀行が増えた際に同様の措置を取り続けるのは困難とみられる。
危機の封じ込めに向け、官民を挙げた対応が続く。
FRCは2022年末時点の総資産が2126億ドル(約28兆円)と全米14位の銀行だ。
米西部カリフォルニア州が地盤で富裕層や不動産、テック企業との取引が多い。
10日のSVBの破綻後、急激な預金の流出に見舞われたFRCに対し、JPモルガンやバンク・オブ・アメリカなど米大手11行は16日、合計300億ドルの預金をFRCに提供する支援策をまとめた。
米銀の破綻がさらに広がり、金融危機に発展するのを防ぐ狙いだった。
それでもFRCの経営不安は払拭しきれず、19日には米S&Pグローバルが信用格付けを投機的水準の「シングルBプラス」まで引き下げた。
こうした状況を踏まえ、大手行は追加の支援策を練り始めた。
報道によると、検討しているのはFRCの資本増強で、大手行による300億ドルの預金の一部ないし全額を資本注入に切り替える案が出ている。
外部からの出資やFRCの身売りも検討しているようだ。
JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が主導して他の大手行トップらと協議を進めているという。
FRCの株価が急落するなかでの資本増強には難しさもある。
20日の米株式市場では増資検討などが伝わったことを受け、1株利益の希薄化懸念から同社株は前週末比で47%安と急落した。
この2週間の株価下落率は9割に達する。
FRCは15日までに米連邦準備理事会(FRB)の資金供給策を通じて1090億ドルを借り入れたが、同日時点の手元資金は340億ドルにとどまった。
預金の引き出し圧力も強いなか、大手行がFRCをどこまで支えきれるかは見通せない。