金融リテラシー向上、投資招く 長野は初心者にマネー講座
「人生100年時代」に自立的で豊かな生活を将来にわたって送るには、金融に関するリテラシー(知識と判断力)が欠かせない。
個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)の加入状況を都道府県別にみると最大3.2倍の差があり「投資熱」の高い地域ほどリテラシーが高い傾向があった。
iDeCoの加入者238万人、10年で17倍
iDeCoは確定拠出年金法に基づく私的年金で、自営業者や企業年金のない会社員、学生などが任意で加入できる。
掛け金全額が所得控除の対象となり、運用益も非課税になる。
2022年3月時点の加入者は238万7772人と、12年3月からの10年間で17倍に増えた。
岸田文雄首相は「人への投資」に重点を置き、資産形成を支援する。5月には加入可能年齢を60歳未満から65歳未満に広げた。
「資産所得倍増プラン」で、さらなる拡充も視野に入れる。
加入率首位は香川県、2位石川県、
1万人あたりの都道府県別加入者(21年3月末時点、運用指図者含む)をみると、首位は香川県の549人だった。
次いで石川県が487人、東京都(460人)、長野県(454人)と続く。全国平均は339人だった。
金融リテラシー調査、結果が良い地域の加入率が高い
上位は金融広報中央委員会が実施した「金融リテラシー調査 2019年」で正答率が高い傾向にあった。
調査の1位は香川県、2位は長野県で、石川県や東京都も中上位に位置する。
同委員会は高い金融リテラシーが家計管理の適切さやトラブルの回避につながると指摘し「金融教育を受ける機会が広く提供されることが望ましい」とする。
香川県、かつて『グロソブの島』と苦い経験
トップの香川県には「苦い経験」がある。07年ごろ瀬戸内海の小豆島が「グロソブの島」として有名となった。
分配金が毎月もらえる「グローバル・ソブリン・オープン」と呼ばれる投資信託が人気を呼び、人口あたりで最も多く購入したとされる地域となった。
しかし、08年のリーマン・ショックや円高などで時価が急落し、利益を得られない島民が続出した。
以後、金融商品を正しく理解する機運が高まった。
地元青年会議所が投信会社の幹部を招き「積み立て投資」を啓発したほか、香川県は生活設計に役立つ「くらしのセミナー」を各地で実施する。
成人年齢が4月に18歳へと引き下げられたことで、高校では「資産形成」の授業が始まる。県内の私立高は野村証券と学習支援に関する連携協定を締結し、講師派遣などについてサポートを受ける。
石川県、長野県は女性に照準
石川県や長野県は女性に照準を合わせる。
老後の生活資金に不安を感じる子育て世代や共働き世帯に、投資による資産増を働きかける。
のと共栄信用金庫(石川県七尾市)は18年度、資産形成などの個別相談に対応するマネーアドバイザー制度を導入した。
自宅を訪問して顧客の疑問にきめ細かく答えることで理解を深めてもらい、iDeCo加入増につなげた。
サンメディックス(長野市)が発行する子育て世代向けの情報誌「モナミ」は、母親を対象としたマネーセミナーを開いている。30歳代を中心とした初心者に長期や分散投資の重要性を伝え「熱」を高めた。
地域経済活性化にも繋がるか
住民の資産が地元企業に向かえば、地域の発展につながる好循環が生まれる可能性もある。
長野証券(長野市)が5月、さわかみ投信と連携して開いた初の投資セミナーでは、長野県内の上場企業の担当者が登壇し、経営戦略や財務状況を説明した。
さわかみ投信の草刈貴弘取締役は「出資によって地元企業と住民が一体感を強めれば、地域にとってもメリットになる」と意義を訴えた。
所見
香川県民、長野県民の金融リテラシーが高く、iDeCoの加入率も高い。
地域別で差が出るのは意外だが、この差が将来の豊かさに直結する。
日本は投資教育にもっと力をいれるべき。