投資家が暗号資産(仮想通貨)交換所の資産菅理に不安を強めている。
業界大手FTXトレーディングが経営破綻し、資産保全が危ぶまれる事態になったことを受けて他の交換所からも仮想通貨を引き出す動きが強まっている。
ドバイの大手交換所からは預かり資産のうち代表的な仮想通貨「ビットコイン」が4割減った。
情報の自主開示に動く交換所も出てきた。
データ分析サイトのコイングラスによると、ドバイの大手交換所、バイビットの電子財布(ウォレット)にあるビットコインの流出が加速している。
15日まで7日間の流出額は300億円と全体の約4割にのぼる。日本にもユーザーが多い。
FTXの破綻は、世界の交換業者の顧客資金の管理体制への懸念を強めた。
投資を続ける投資家も、交換所から自分で管理するウォレットへ資金の引き揚げを急いだ。
投資家は交換所に「実際に資産を保有している証明」を強く求めている。
ところが、バイビットのベン・チョウ最高経営責任者(CEO)は13日、SNS(交流サイト)上のイベントで「(資産を保有している)オフラインのウォレットの公開には数カ月かかる」と発言し、投資家の一段の引き出しを招いた。
FTXを除く世界大手取引所17社の公開ウォレットのビットコインの残高は8日からの1週間で約1割(4000億円超)減った。
調査会社グラスノードによれば残高は2018年以来4年ぶりの低水準に落ち込んだ。
流出を防ぐため情報開示に踏み切る交換所も出ている。
シンガポールの交換所、クリプト・ドット・コムは引き出しの増加を受けてオフラインのウォレットのアドレスを公開した。
ところが、ウォレット内の資産約30億ドルのうち2割が投機性の高い仮想通貨シバイヌだったと判明し、さらに引き出しが増えた。
14日にはネットワークの負荷が高まり一時引き出しが遅延し、混乱が広がった。
最大手のバイナンスも10日に保有資産を公開し、14日にはSNS上のイベントで投資家の疑問に答えるなど、不信感の払拭につとめている。
ただ、残高は15日までの7日間で12%程度減った。
交換業のビットバンク(東京・品川)の長谷川友哉氏は「交換所の中でも特に規制の緩い地域などに本社をおく企業を避ける動きが出始めた」とみる。
透明性のない交換所の資産の中には、FTXなどのように投機性が高いコインや自社発行で裏付けのはっきりしないコインなどが含まれる可能性が意識されている。
交換所の残高の減少は市場の流動性の枯渇を意味し、価格変動が大きくなるなど市場を不安定にする可能性がある。
さらに取引量の減る悪循環に陥ると交換所の収益悪化を招く。
当局も規制強化に動くとみられ、透明性を高められない交換所の淘汰が急速に進みそうだ。