円相場の下落が続き、政府・日銀の為替介入に注目が集まっている。
24年ぶりだった9月22日に続き、10月21日にも円買い・ドル売りの介入を実施した。
誰が決め、実際の取引は誰がどうやって実施するのか。3つのポイントをまとめた。
介入の実務は誰が担うのか?
為替介入の決定権は外為法上、財務相にある。日銀がその代理人として実務を担う。
日銀の為替課は市場参加者や日銀の海外事務所、海外の中央銀行と緊密にコンタクトをとって相場動向を分析している。
集めた情報を財務省の為替市場課に毎日伝える。
介入の判断は財務省の国際部門のトップである財務官が事実上、下すことが多い。
9月22日は日銀が大規模な金融緩和を続けると決めたことで円安が進み、神田真人財務官が介入が必要と判断して鈴木俊一財務相の了解をとった。
10月21日も同様とみられる。
決定後は財務省から日銀に対して、介入額などを具体的に指示する。
円買い・ドル売りの場合、日銀は外貨準備のドルを民間銀行に売り、同時に円を買う取引をする。
民間銀行は日銀から買ったドルを市場に売り、日銀に売る円を市場で買う。
この取引を通じて市場で円の需要を強め、円高方向への誘導を狙う。
日本の夜間や休日に介入するときは海外市場で実施する。
日銀が直接取引することもできるが、各国の中央銀行に委託することもある。
米国市場なら連邦準備銀行のひとつのニューヨーク連邦準備銀行、ユーロ圏は欧州中央銀行(ECB)や各国の中銀、英国ならイングランド銀行が相手となる。
委託を断られることはまずないという。
受託した海外中銀は日銀が日本市場で介入するのと同様の取引を海外市場で行う。
日本の夜間に実施した10月21日の介入の具体的な手法は明らかになっていない。
単独介入と協調介入の違いは?
9月22日、10月21日とも日本政府の外貨準備のみを使った単独介入だったとみられる。
一方、複数の通貨当局が協議のうえで、それぞれの当局の資金を使って同時か連続的に実施することを協調介入という。
投入できる資金の規模が大きくなるため、相場を動かす力が増す。
24年前の1998年6月の円買い・ドル売り介入は日米当局がそれぞれ資金を出し合った協調介入だった。
為替市場の歴史に残る85年のプラザ合意は5カ国による協調介入だった。
日米と英国、ドイツ、フランスが行きすぎたドル高に歯止めをかけることに合意し、それぞれの資金でドル売り介入を実施した。
主要7カ国(G7)は2000年にユーロ安阻止のためのユーロ買い、11年には円高是正のための円売り介入で協調した実績がある。
どうやって公表するのか?
9月22日は午後5時ごろに介入し、5時15分ごろに神田財務官が財務省内で記者会見を開いて「先ほど断固たる措置に踏み切った」と表明した。
わずか40秒ほどで会見を切り上げると、「いま作業しているので後ほど」と言い残して執務室に戻った。
なるべく早く介入の事実を市場に知らせたいという意向がにじんだ。
市場では「政府・日銀は動かない」との見方が多かっただけに、神田氏の表明がサプライズとなって円高が進んだ。
一時、介入前より5円以上円高の1ドル=140円台となった。
10月21日のように介入の事実を公表しない「覆面介入」もある。
神田氏は「介入の有無についてはコメントしかねる」と話すにとどめた。
10月13日の米国の消費者物価指数(CPI)発表後にも円高に振れる場面があり、覆面介入の可能性が指摘されている。
03~04年に断続的に35兆円をつぎ込んだ円売り・ドル買いや11年の円売り・ドル買いも覆面介入の代表例だ。
投資家はいつ介入があるか疑心暗鬼になりやすい。
財務省は毎月末、直近1カ月の介入実績を発表する。
次回は10月31日午後7時に9月29日から10月27日の実績を明らかにする。
21日の介入はここに表れる。
もっとも、この段階で公表するのは期間中の合計介入額で、どの日にどれだけの規模の介入をしたかはわからない。
日次のデータは四半期ごとに公表する。10~12月分が出るのは23年2月上旬になる。