証券取引等監視委員会は複雑でリスクの高い「仕組み債」の販売をめぐり、千葉銀行と傘下のちばぎん証券を行政処分するよう金融庁に勧告する方針を固めた。
リスク性商品の購入経験がない銀行の顧客に十分な説明をせず高リスクの仕組み債を販売していた。監視委の勧告を受け、金融庁は業務改善命令などの処分を検討する。
金融庁によると、銀行や証券会社の2021年度の仕組み債の販売額は約4.1兆円で、うち約6400億円が地方銀行による販売分だ。
金融庁や証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)に寄せられるトラブル事例は後を絶たず、投資初心者などへの販売が問題視されている。
仕組み債はデリバティブ(金融派生商品)を使った複雑な仕組みの債券で、もともとプロ向けに開発された。
高い利回りをうたう一方、個別株や為替相場などの指標があらかじめ決めた水準(ノックイン価格)を下回ると償還時に元本割れが発生したり、利益を出すことなく早期償還されたりする場合がある。
米利上げに伴う相場の急変でノックイン条項に抵触し、損失を抱える個人が増えたとみられることが仕組み債問題の背景にある。
千葉銀は自行の顧客をちばぎん証券に紹介し、ちばぎん証券がその顧客に仕組み債を販売していた。
監視委はこの「銀証連携」について検査を実施。
その結果、定期預金取引が中心で元本割れリスクのある投資商品の購入経験がない顧客に複雑な仕組みやリスクを十分に説明せずに仕組み債を販売していたことを問題視しているようだ。
金融商品取引法は顧客の知識や経験、財産の状況、契約の目的に沿って販売する「適合性の原則」を定めている。
投資経験に乏しい顧客に十分な説明を尽くさずに仕組み債を販売したことが、この適合性の原則に違反するとして金融庁への処分勧告に踏み切るとみられる。
金融庁が金商法の適合性の原則違反で行政処分を出せば2004年3月に泉証券に対して業務停止命令と業務改善命令を出して以来、2例目となる。
仕組み債に関する行政処分は日本に本社を置く銀行・証券会社に対しては初めて。