岸田文雄首相は10日、臨時国会の会期末にあわせ首相官邸で記者会見を開いた。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題の被害者救済に向けた新法の成立を歓迎し、経済対策の運用について説明した。
防衛力強化に伴う増税に理解を求めた。
与野党の垣根を越えた圧倒的多数で成立
救済新法の成立に関し「与野党の垣根を越えた圧倒的多数の合意のもとで新法を成立させることができた」と強調した。
「被害に苦しむ元信者や家族が直面する困難を前には与党も野党もない」と語った。
被害者らが新たな制度を利用しやすいよう「環境の早急な整備に全力を傾ける」と唱えた。
政府として省庁横断で支援し「新たな制度をしっかり運用する」と言及した。
臨時国会で成立した補正予算に関連し「国民生活、雇用の安定、事業継続に向けて万全の備えを用意するとの私の判断にそって策定した」と述べた。
大手電力からの値上げ申請に関し「厳正で厳格な査定を徹底していく」と力説した。
出産育児一時金は50万円に増額
子ども・子育て支援策に継続的に取り組む考えを示した。
妊婦や子育て家庭への「伴走型」の相談支援を充実させ、育児用品や産後ケアなどに使える10万円相当の支援策を「所得制限を設けることなく来年以降も継続してお届けする」と語った。
2023年度から出産育児一時金を現行の42万円から50万円に増額すると明言した。
「過去最高の引き上げ幅だ」と強調した。
防衛増税「防衛力の維持強化に不可欠」
政府が年内に改定する国家安全保障戦略についても説明した。
防衛力の強化に関し「厳しい安全保障環境を前に、一刻の猶予もない待ったなしの課題だ」と力説した。
財源を確保する必要性にも触れ「国家の意思として毅然と内外に示す。強い決意で臨む」と言明した。
防衛力強化の財源に関して「理解いただかなければならないのは増税が目的ではない。防衛力の強化・維持が目的だ」と説いた。
「強化する防衛力を未来にむかって維持強化するための裏付けとなる財源は不可欠だ」と理解を求めた。
「未来の世代への私たち世代の責任でもある」とも言及した。
増税「経緯を国民に説明することは重要」
防衛費の財源としての国債発行の可能性を問われ「未来の世代に対する責任としてとりえない」と否定した。
「5年後も未来に向かって防衛力を維持・強化しなければならない。それが国家・国民の平和と安全を預かる首相の使命だ」と力説した。
参院選で税負担の可能性も含めて国民に問うべきだったと指摘され「選挙の時期などにあわせて公約で訴えることも大事だと思うが、選挙時期に関わらず政治はずっと動いている」と指摘した。
「参院選を乗り越えて議論が詰まってきて、今国民に協力をお願いしなければならない。議論の積み重ねによってこうなったという経緯を国民に説明することは重要だし、意味について丁寧に説明することは重要だ」と主張した。
衆院解散「全く考えていない」
増税に絡んだ衆院解散・総選挙について問われ「全く考えていない」と述べた。
内閣改造を否定
内閣改造で体制の立て直しをするかとの質問には「適材適所でベストな体制を組み、首相として先頭に立って取り組む。こうした基本姿勢は徹頭徹尾貫きたい」と答えた。
その上で「現時点で内閣改造については全く考えていない」と明言した。
広島サミット「核兵器による威嚇を拒否」
23年5月に広島市で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)を巡り「各首脳と積極的に議論を重ね、成功に向けて様々な努力をしたい」と語った。
ウクライナ侵攻などを念頭に「武力侵略も核兵器による威嚇も国際秩序の転覆の試みも断固として拒否するG7の強い意志を歴史に残る重みをもって示したい」と強調した。
ロシアへの制裁を巡り「G7と足並みをそろえて、迅速に厳しい制裁措置をしている」と語った。
ロシア産原油の輸入についてはG7の合意に基づき対応しているとして「ロシアへの事実上の軍事支援を行っている指摘はあたらない」と説いた。
「制裁が一層効果的になるよう国際社会と緊密に連携していく」と意欲を示した。
日中関係「日中双方の努力で建設的かつ安定的な関係」
政府が近くまとめる新たな国家安全保障戦略における中国の現状認識に関し「記述ぶりはまだ決まっていない状況だ」と話した。
中国訪問の予定について「何も決まっていない」と指摘した。
「日中双方の努力で建設的かつ安定的な関係を構築していかなければならない。日中関係のありようを考え、具体的な日程を考えていきたい」と言明した。
憲法改正に関し臨時国会の憲法審査会で緊急事態条項の論点が整理がされたと紹介した。
「議論を通じて国会で与野党の合意を得ながら一つ一つ結論を出していく。そのための一歩として歓迎したい」と述べた。
子育て政策「社会全体での費用負担のあり方検討」
23年4月に発足するこども家庭庁における子育て政策の進め方について言及した。
「必要な政策が何かを議論した上で体系的に取りまとめる。社会全体での費用負担のあり方の検討と子ども政策の充実に取り組む」と主張した。
新型コロナウイルスを感染症法上の分類を季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げることについては議論を続けると語った。
「感染状況をしっかり確認した上で専門家の意見を聞きながら判断しなければいけない」と説明した。
引き下げの時期は明言しなかった。