こども家庭庁が3日に本格始動した。
各省庁に分散していた関連政策を束ね、少子化対策だけでなく、生まれる前からの切れ目のない支援を目指す。
他省庁に政策の是正を求める勧告権も持つ。
政府が掲げる「こどもまんなか社会」実現に向けては一連の政策に子どもの意見を反映させる取り組みが欠かせない。
岸田文雄首相は発足式で「子ども・子育てに優しい社会づくりをリードしていくことを期待する」と語った。
新組織発足と同時に施行されたこども基本法は国や自治体に子どもたちの意見を関連政策に反映させるよう義務付ける。
例えば校則や地域の公園づくり、児童館運営のあり方について意見を聞くことなどが想定される。
背景にあるのは子ども・若者世代の多くが抱く「声が届かない」との思いだ。
内閣府の2018年度の国際調査で「社会の問題解決に関与したい」と答えた若者は日本で42%にとどまり、7カ国で唯一半数に届かなかった。
米国やドイツでは7割を超す。
認定NPO法人フローレンスの駒崎弘樹会長は「おかしいと思っても声を受け止めてもらえない積み重ねが日本の子どもや若者の意欲をそいでいる」と指摘する。
18歳未満人口は00年に総人口の18%いたが、21年に14%まで減った。
今後さらに先細りが予想される。
これまでも子どもの意見を取り入れる仕組みは限られた。
未来を支える世代が「自分の声で周囲を変えられた」経験を積み、挑戦し続けられる環境をつくるのが社会の活力維持に必要だ。
そうした変化を親子が実感できるかも問われる。
現場の模索は始まっている。
3月からは全国の小学生や若者1万人規模の意見を集める事業を進める。
大人が聞きたいことを聞くだけでなく、子ども・若者が自らテーマを設定し、事業の企画運営に参画もする。
小倉将信少子化相は3月の記者会見で「子どもを子ども扱いせずに対等に話し合い政策を作っていく」と意欲を示した。
子どもの意見尊重は世界の共通認識となりつつある。
当事者の声を吸い上げる独立機関「子どもコミッショナー」を70カ国以上が設ける。
子どもに寄り添い、挑戦を後押しする社会に転換していくためにも、こうした機関設置を改めて検討する必要があるだろう。