人工知能(AI)の倫理問題を調査する非営利団体、米AIデジタル政策センター(CAIDP)はこのほど、米連邦取引委員会(FTC)に米オープンAIが開発する最新AI「GPT-4」の商業利用を差し止めるよう要請したと発表した。
欧米ではAIの高度化を警戒する声が急速に広がっている。
イタリア当局は3月31日、オープンAIの対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」を一時的に禁止すると明らかにした。
GPT-4はオープンAIが3月に発表した最新AIで、人と自然な会話ができる対話型AIサービスのチャットGPTを動かすための基盤となる技術だ。
従来の8倍にあたる2万5000語まで文章を扱えるようにし、利用者の指示でより専門性の高い論文もつくれる。
米国の司法試験の模擬試験では上位10%程度の成績で合格したという。
AIデジタル政策センターは、GPT-4がFTCの定めたAIの利用指針を満たしていないと指摘する。
どのようにデータを集めているかといった透明性や、提供する情報に偏見を含まないようにする公平性に欠けると主張している。
FTCに対し調査を求め、基準を満たすまではGPT-4の商用サービスのさらなる展開を差し止めるように要請した。
AIデジタル政策センターの会長兼リサーチディレクターのマーブ・ヒコック氏は「偏見や偽りを制限する必要な手段がなければ、公共の安全に対するリスクがある」とコメントしている。
欧州でも同様の動きが相次ぐ。
イタリアのデータ保護当局は31日、チャットGPTのデータ収集の手法が不適切だとして、調査に乗り出したことを明らかにした。
利用者に適切な通知がないままデータを集め、利用者の年齢確認も不十分な点が同国の個人情報保護に関する法律に違反すると判断したという。
オープンAIにはユーザー情報の処理を一時停止するよう求めた。
高度AIの開発をめぐっては、偽情報の氾濫や偏見を助長しかねないといった負の側面を懸念する声が相次ぐ。
最近では米非営利団体がその危険性を警告する書簡を公開して署名活動を始め、米起業家のイーロン・マスク氏らが賛意を示した。
GPT-4を上回るシステム開発に向けた訓練を中断するように呼びかけている。
一方で企業のAI開発は急ピッチで進んでいる。
米マイクロソフトがオープンAIに巨額投資し、米グーグルも対話型AIサービスの「Bard(バード)」を発表した。
米テクノロジー企業を中心に性能向上に向けた開発競争が過熱している。
欧州連合(EU)はAIの倫理規制の整備を進めており、加速度的に進む開発にどう歯止めをかけるか世界的に議論を巻き起こしている。