国土交通省が22日発表した2023年1月1日時点の公示地価は、住宅地や商業地といった全用途の全国平均が前年比1.6%上昇した。
上昇は2年連続で、リーマン・ショック前の08年(1.7%)に次ぐ水準となった。
往来の回復や海外マネーの流入で都市部の商業地が伸びた。
地方では価格下落も続く。米欧の金融システム不安などによるマネー流入の鈍化はリスクとなる。
全国平均の上昇率は22年(0.6%)を1ポイント上回り、新型コロナウイルス禍前の20年(1.4%)を超えた。上昇地点は調査対象の全国2万6000地点の58%(22年は43.6%)に達した。
商業地は全国で1.8%上昇した。オフィスや店舗が集中する都心部がけん引した。東京23区では千代田、中央、港の都心3区が3年ぶりにプラスとなり、それぞれ2.1%、2.1%、2.8%上がった。
東京、大阪、名古屋の三大都市圏も商業地が2.9%上昇し、前年は横ばいだった大阪が3年ぶりにプラスに転じた。
コロナ禍からの経済社会活動の正常化が進み、都心回帰の傾向を映し出す。
インバウンド(訪日外国人)の回復期待から東京・浅草や京都・祇園といった観光地で上昇が目立つ。
住宅地は全国で1.4%上がった。都市部でマンション価格が高騰し、コロナ禍でのテレワークの浸透などで交通利便性が高い郊外でも地価が上昇している。
千葉県木更津市ではJR袖ケ浦駅から約2キロメートル地点の上昇率が20.9%となっている。
大型再開発や交通インフラの整備が進む地方4市(札幌、仙台、広島、福岡)は全用途平均で8.5%上がった。
プロ野球の新球場開業で住宅地の人気が上昇している札幌近郊の北広島市が複数の地点で約3割上がるなど、4市の周辺にも波及。
4市を除く地方圏は住宅地が28年ぶりにプラスとなった。
都道府県別にみると、人口減などで地価の下落が続く地方県は少なくない。
商業地ではおよそ半数の23県(前年は29府県)が、住宅地では22県(同27県)がそれぞれマイナスにとどまっている。
日本の不動産市場は低金利で資金調達でき、年間賃料収入を物件取得価格で割った投資利回り(キャップレート)は安定しているとされる。
不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL)によると、20年の日本の不動産投資総額に占める海外投資家の比率は34%で、コロナ禍でも魅力的な市場と位置づけられていた。
米欧の利上げ長期化による景気後退など先行きには不透明感もある。
JLLがまとめた22年の世界の不動産投資額は1兆290億ドル(約136兆円)と前年比で19%減った。
足元で投資縮小の動きがみられ、目下の金融システム不安も懸念される。
三井住友トラスト基礎研究所の坂本雅昭・投資調査第2部長は「海外の市況悪化が日本の不動産価格の下落圧力となる可能性がある」と話す。