独立系金融アドバイザー(IFA)と言われる仲介業者が仕組み債を、ろくにリスクを説明せずに販売していたのではないか。
仕組み債の販売停止が相次ぐ
苦情が続いている仕組み債で販売停止が相次ぐ。
楽天証券は9月末にすべての仕組み債の取り扱いを停止する。
楽天証券は業務委託する金融商品仲介業者を通して仕組み債を販売してきた。
仲介業者は主要販売経路のひとつだが、楽天証券の停止で供給元が絞られる。販売停止を決めた三井住友銀行や千葉銀行に続き、三菱UFJ銀行も顧客層に応じて仲介する商品を限る検討を進める。
仕組み債は債券の一つだが、金融派生商品(デリバティブ)を使い国債や社債よりも高い利回りを設定している。
あるネット証券が扱う株価連動の仕組み債の年利は約9%ある。
もともとはプロ向けに開発された商品で、最近では個人も購入できる。
EB債(他社株転換社債)や為替レート連動債といった商品が有名で、最低購入金額は100万円からとしている金融機関が多い。
大きな相場変動があった場合などに損失が膨らみやすい。
金融庁によると、3カ月間で元本の8割を毀損したケースもあったという。
証券・金融商品あっせん相談センターには「販売時に十分な説明がなかった」「元本確保の商品だと思っていたが大きな損失が出た」といった苦情があった。
独立系金融アドバイザー(IFA)
個人向け販売の一翼を担っているのが、独立系金融アドバイザー(IFA)と呼ぶ約800の金融商品仲介業者だ。
楽天証券はSBI証券と並び、仲介業者向け取引の大手だ。
アドバイザーナビ(東京・中央)が約200の仲介業者を対象にした調査によると、5割超の仲介業者が楽天証券と取引していた。
楽天証券の仲介業者を経由した預かり資産残高は22年6月末時点で約9000億円と1年間で1割強伸びた。
楽天証券の販売は投資信託や株式が中心になっている。
預かり資産に占める仕組み債の割合は小さいが、仕組み債を商品ラインアップから外すことで一部の仲介業者からの反発は避けられそうにない。
それでも「業界をあげて販売ルールの強化などを議論する中で従来通りに販売を続けるのは難しい」(楽天証券幹部)と判断した。
ネット証券ではSBI証券がグループのSBIマネープラザや地銀との共同店舗で22年1月から、顧客が要望しない限り仕組み債を提案したり、勧誘したりするのを停止した。
マネックス証券は仲介業者を通した仕組み債の販売状況について実態調査を進める。
仕組み債は為替や株価、金利など参照する指標によってリスクが異なる。
大手行では三菱UFJ銀行が保有資産などに応じて仲介する仕組み債の種類を制限することも含め、対応を検討している。
三井住友銀行は7月に勧誘や販売を止めたが「利益を得た成功体験から仕組み債を望む顧客もおり、一律に見直すのは難しい」という声もある。
仕組み債の販売額は相当減少を見込む
金融庁によると、21年度の仕組み債の販売額は証券会社2.4兆円、大手銀行1兆円、地銀6400億円だった。
金融機関の相次ぐ取り扱い停止を受けて販売額の減少が想定される。
ある仲介業者は「商品性を理解した上で投資したいという個人はかなり限定的だ」とみている。
自主規制機関の日本証券業協会は顧客の資産や投資経験、金融知識に応じて仕組み債の販売を限定するといった具合に販売ルールを見直す。
森田敏夫会長は「年明けくらいには原案をまとめたい」と話す。
楽天証券は新ルールを見極めた上で販売を再開するか決める。