米利上げで逆流
世界の暗号資産(仮想通貨)の価値が減少している。
情報サイトのコインマーケットキャップによると、27日時点で世界全体の時価総額は1.2兆ドル(155兆円)と昨年末から46%減り、1兆ドルが消失した。
金融緩和であふれたマネーが時価総額を押し上げていたが、米利上げで資金の逆回転が起きた。
値動きの激しい仮想通貨は金融システムを不安定にしかねず、米欧の金融当局は規制強化に動き始めた。
テラUSD、4セント台に下落
「ステーブル(安定している)だと信じてしまった。ほぼ0円になるまであっという間で何もできなかった」(東京都の20代男性)。
米ドルなどの法定通貨と価値が連動するように設計されたステーブルコイン、テラUSD(27日からテラクラシックUSDに名称変更)が5月上旬に急落したのだ。
情報サイトのコインデスクによると27日時点で4セント台と、本来連動するはずのドルの価値を9割以上下回る。
テラUSDの時価総額は4月末時点で185億ドル。ステーブルコイン市場ではテザー、USDコインに次ぐ規模だった。
テラUSDの運営者は、テラを預ければ約20%の利回りを保証するとして資金を集めていたが、大規模な資金流出が始まると、下落に歯止めが掛からなくなった。
ビットコイン、イーサリアムも半値に
代表的な仮想通貨のビットコインも高値(約6万7000ドル)から半値以下に下がり、イーサリアムも昨年末比で5割下落した。
下落率はハイテク株の多いナスダック総合株価指数(22%安)と比べて大きい。
ビットコインは株式などの伝統的な資産と値動きが連動しない「デジタルゴールド」と呼ばれたが、実際には株と同時に下落した。
仮想通貨市場で機関投資家比率の上昇
背景には、仮想通貨市場での機関投資家比率の上昇がある。
仮想通貨交換会社の米コインベース・グローバルによると、2021年の機関投資家による仮想通貨取引は約140兆円とすでに個人の2倍。
仮想通貨は株と同じリスク資産の一種との位置づけだ。
さらに仮想通貨からの資金流出に弾みをつけたのが、DAO(ダオ、分散型自律組織)だ。
コンピュータープログラムが自動的に売買を繰り返すネット上の投資の「器」となり、投資家から大量の資金を集め、仮想通貨に多額の資金を投じてきた。
相場の変調でプログラムが一斉に「売り」と判断。これがヘッジファンドの売りも巻き込み、値動きが大きくなった。
米連邦準備理事会(FRB)のブレイナード副議長は、テラ騒動に関し、「一連の出来事は規制上の明白なガードレールが必要なことを示す」と指摘した。
当局の間では金融システムへのリスク要因として警戒する声が高まっている。
所見
ステーブルコインが9割も下落した。
仮想通貨はハイリスク資産。チャンスがある分野とも言えるが、価値の裏付けも無いため何が要因で値動きするかわからない。
ギャンブルと同じか。