世界最大の半導体受託生産をする台湾積体電路製造(TSMC)が日本(熊本)に工場を2022年に建設する。2024年には量産を開始する。
政府が数千億規模の補助金
半導体不足が長期化するなか、日本政府は経済安全保障上の観点から有力企業の工場が国内に必要との立場にある。
TSMCの工場を日本に誘致し、補助金も出す予定。新工場の投資額、具体的な建設地などの詳細は明らかになっていないが、TSMCはソニーグループやデンソーと共同で熊本県に建設する方向で調整を進めており、建設費用も1兆円規模になる可能性がある。日本政府が半額程度を補助することになれば、数千億規模になる。
岸田首相は10月14日の記者会見にて「TSMCの総額1兆円規模の大型民間投資などへの支援を経済対策に盛り込む」と表明した。31日の衆院選後の2021年度の補正予算案に組み込まれる模様。
予算の枠組み
生産能力と技術力があり、安全保障上の懸念がないメーカーを政府が認定する制度をつくる。
新エネルギー・産業技術総合開発機構に設ける基金から、認定したメーカーに補助金を出す案が有力。国内に優先出荷する義務を課し、事業撤退などが起きれば、補助金を返還してもらう。TSMCの熊本工場が認定の1号となる見通しだ。
半導体生産工場が日本に必要な背景
世界的な半導体不足により、自動車や医療機器、家電製品などが減産を余儀なくされている状況で、日本はの多くの企業は半導体の調達をTSMCに頼っていた。TSMCの半導体生産は9割以上が台湾で行われているが、中国が台湾に対し軍事的圧力を高めていることから、半導体を調達できなくなる、という心配の声が出ていた。
日本政府は食料やエネルギーなどと同様に半導体も社会に不可欠なモノとし、市場原理に任せず国が責任を持って確保することにした。
世界貿易機関(WHO)ルールとの整合性を問われるリスク
経済安保のためとはいえ、巨額の補助金は市場をゆがめるおそれがある。度が過ぎれば公正な貿易の支障にもなるため、WTOが補助金に関するルールを設けている。
WTO協定違反と即刻みなされる「レッド補助金」は輸出を支援する輸出補助金と、国産の部品や材料の使用を条件に配る国内生産品補助金の2つであり、本件はこれには該当しない。
一方、ケースバイケースで違法性を判定する「イエロー補助金に該当する」おそれがある。補助金を得て建てた工場から半導体を低価格で日本国内に供給した場合に、半導体メーカーを抱える韓国などから「日本への輸出が減って損害を受けた」と訴えられる可能性もある。TSMCが日本から安値で輸出する場合も同様に提訴されるリスクもある。
ただし、イエロー補助金で違反と認定された事例は、現在は数例にとどまる。
所見
ルールギリギリを攻めてほしい。半導体はデジタル社会には不可欠な製品であり、今回の政府の動きにとても心強く感じます。
今回のように予算は未来への投資であってほしい。
[…] […]