京都銀行や横浜銀行などの40の地方銀行が、基幹システムをクラウド技術を使った新システムに切り替える検討に入る。
メインフレームと呼ばれる巨大コンピューターを中心としたシステムから、ハードやデータセンターが不要なクラウドシステムへ移行し、大幅なコスト削減につなげる狙いだ。
実現すれば、全地銀の半数近くがシステムでつながる巨大連合が誕生する。
40地銀は現在、4つの陣営に分かれてNTTデータのシステムを利用している。
NTTデータは週内にも、これら4つのシステムをクラウド型の新システムに一本化することを各行に提案する。
複数の主要行はすでに参加に前向きな考えを示している。
4陣営は①京都銀行陣営②きらぼし銀行陣営③フィデアホールディングス(HD)陣営④横浜銀行陣営――で、それぞれ別の共同システムを使っている。
NTTデータはまず京都銀行陣営、横浜銀行陣営と移行に向けた交渉に入る。
きらぼし銀行陣営、フィデアHD陣営とも交渉を進めていく。
2028年度をめどに京都銀行陣営の13行、30年度をめどに横浜銀行陣営の6行が参加する方向だ。
新システムの名称は「統合バンキングクラウド」。
勘定元帳の管理や査定など銀行業務の中核を担う基幹システムを1つに集約できる。
従来型と比べ、運営費が4割程度削減できる可能性があるという。
システムの統合とクラウド化には、地銀同士の再編・統合などよりも手早くコスト削減の実をあげられる面がある。
顧客向けのサービスメニューに直結するアプリは統一せず、銀行グループの希望に応じてどのアプリを利用するか選択できるようにする。
銀行側は顧客向けのサービスで違いを出しながら、コストのかかる基幹部分を共同化し、コスト削減につなげる。
システムにクラウドを取り入れる動きは他の銀行にも広がっている。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)はアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)を活用。
三井住友FG はマイクロソフトと、みずほFGはグーグル・クラウド・ジャパンとそれぞれ戦略提携している。
米銀大手JPモルガン・チェースは決済技術のスタートアップ企業を買収。
クラウドで決済サービスの機能を拡充する。
ただ銀行のシステムを全面的にクラウド化した事例は少ない。
金融庁の21年の報告書によれば、勘定系の基幹システムにクラウドを利用している地銀は1割だった。
先行する北国銀行と紀陽銀行はBIPROGY(ビプロジー、旧日本ユニシス)と組み、クラウドに移行した。
山梨中央銀行も参加する見通しだ。
ふくおかFG傘下のデジタル専業銀行「みんなの銀行」はグーグルのクラウド上にシステムを構築している。
クラウドシステムには課題もある。
システム障害が起きた際、導入する企業全体に影響が広がりやすい。
金融庁は報告書で事故発生時の対応に懸念があることを指摘した。
ベンダーには効率だけでなく安定的に稼働する体制も求められる。
NTTデータは04年に地銀共同センターを設立した。
当初、京都銀行や千葉興業銀行が参加した。
現在は地銀40行が参加する4陣営のほか、りそなグループなどにシステムを提供する。
NTTデータによる国産クラウドへの全面転換で銀行システムは転機を迎える。