変動金利が1番低い金利で、金利が上昇しなければ金利負担が1番少ない。
全期間固定と比べると支払いが1,000万円以上の差が出ることもある。
一方、変動金利が上がらない保証は無い。
金利上昇時にある程度まとめて返済できるように、蓄財することが賢いか。
固定金利は上昇中
大手銀行が公表した7月適用分の住宅ローン金利は、「固定期間選択型」(10年固定型)が軒並み上昇しました。
住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して扱う全期間固定型の「フラット35」(返済期間21~35年、融資率9割以下)の金利も同様に上昇しています。
金利上昇も話題になるなか、こうした固定金利と変動金利のどちらを選ぶべきか悩まれている方も多いでしょう。
変動金利は変わらず
足元は、現在の変動金利型の住宅ローン金利(大手5行平均)は0.448%で、2021年8月適用分から変わりありません。
一方、固定期間選択型は1.09%と、0.681%から上昇。フラット35も1.51%と1.28%から上がっています。
仮に今の金利で35年元利均等返済(ボーナス払いなし)で5000万円を借りたとすると、
変動金利型(大手銀行の中で最も高い適用金利である0.475%)なら毎月の返済額は12万9241円(総返済額は約5428万円)、フラット35ならば15万3337円(同約6440万円)となります。
「日本は低金利を維持せざるを得ない状況にある」と考える方も多く、
金利は上がらないので問題ないとの認識から、結果として変動金利型に人気が集まっているのも理解できます。
変動金利が上昇したら
変動金利型で住宅ローンを借りたあとに適用金利が上昇したら返済額はどうなるのでしょうか。
先述の条件で借り入れした後の金利上昇幅が異なる、2つのパターンで検討してみましょう。
まずは6年目から毎年0.1%ずつ金利が上昇し、15年目で適用金利が1.475%に達し完済まで同水準を保った場合。
もう一つは同じタイミングで毎年0.2%ずつ上昇し、同じく15年目で2.475%に達した場合を考えます。結果は次の表の通りです。
表のように変動金利型は適用金利が不変なら最もお得に見えますが、金利の上昇幅次第では見え方がずいぶん変わります。
例えば10年間、毎年0.1%ずつ金利が上昇する表の例では全期間固定金利型より総返済額も少なくてすみ、
16年目以降の毎月の返済額も2万円弱増えるだけですので何とかやりくりできるかもしれません。
一方、毎年0.2%上昇する例では総返済額が上回るので、全期間固定金利型を選択したほうがよいという結論になります。
このように、金利がどの程度上昇するかによって結果は大きく変わるのです。
なお、変動金利型は半年ごとに金利を見直します。
ただ、変動金利型には一般的に「5年間は返済額が一定」というルールがあるため、毎年金利が上昇しても5年間は返済額は変わりません。
また、返済額が上昇する場合は「従前の返済額の1.25倍が上限」というルールもあります。
固定期間選択型は当初は金利が変わらず、一定期間後に再度金利タイプを選ぶことになるのですが、こうしたルールが適用されません。
当初固定期間終了後に再度金利タイプを選ぶ際に、金利上昇がそのまま返済額に跳ね返ってくる可能性があることに注意しましょう。
『金利上昇後、固定金利に切り替え』は可能か
金利が将来、どのように変化するかわからないならば
「最初はお得な変動金利で借りて、金利が上昇したら固定金利に切り替えればよいのではないか」
とおっしゃる方がいますが、これは大きな間違いです。
変動金利は短期金利に、固定金利は長期金利に連動しています。
一般に金利上昇が予想される時には、長期金利が短期金利よりも先に上昇します。
現在の住宅ローンの動向を見ても、長期金利に連動する固定金利が上昇しています。
つまり変動金利が上昇したときには、すでに固定金利はもっと上昇しており、その時点で切り替えたのでは遅いのです。
金利上昇時に耐えられる『余力の有無』で考える
金利がいつ、どの程度上がるかを予想できればよいのですが、誰にも正解は分かりません。
そうなると、住宅ローン選びのポイントは「金利が上昇しても、返済できる余力がどの程度あるのか」が重要になります。
収入が高い、あるいは余裕資金が潤沢であるといった場合は金利上昇への耐性が高いと考えられますので、
変動金利型を選択しても問題ないかもしれません。
逆なら慎重に検討する必要があるでしょう。
それでも変動金利型を選びたい場合は、余裕を持って返済できるように借入額を減らす(自己資金を増やす)などの工夫が必要ではないかと思います。