日銀は17~18日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和の継続を決めた。
長期金利の上限を0.5%とする長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)など政策の大枠は維持しつつ、投機筋の「空売り」に対抗するために金融機関に国債の購入を促す異例の資金供給に乗り出す。
国債市場の機能低下など副作用が残るなか、10年に及ぶ異次元緩和は綱渡りが続く。
「長期金利の変動幅をさらに拡大する必要があるとは考えていない」。
日銀の黒田東彦総裁は18日の会合後に記者会見し、大規模緩和を続ける考えを改めて強調した。
会合後に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、22年度の物価見通しを昨年10月公表時点の2.9%から3.0%に引き上げた。
政府・日銀が目標として掲げる2%を上回る。
ただ23年度は1.6%に据え置き、「(2%目標を)安定的に達成できる状況になっていない」(黒田総裁)として緩和縮小を見送った。
昨年12月の前回会合では、0%程度からプラスマイナス0.25%としていた長期金利の変動許容幅を0.5%に拡大した。
人為的に長期金利を抑えてきたため、金利のカーブで10年債の利回りだけ不自然に低くなる「ゆがみ」が生じ、企業の社債発行などに悪影響が出る懸念が高まっていた。
ゆがみは投機筋にとって格好の標的になっている。
不自然に割高な10年債を借りて空売りしておけば、日銀が政策修正に踏み切って利回りが上がった時に買い戻すと利益が出る。
日銀は12月と今年1月にそれぞれ17兆円(通知日ベース)の国債を買い入れる「防戦」に迫られた。
日銀は今回新たな対抗手段を打ち出した。
金融機関に資金を貸し、国債買い入れを促す「共通担保資金供給オペ」の拡充だ。
日銀が直接国債を買わなくても金利を押し下げる効果を見込む。
具体的には市場取引が多い5年債などを銀行に購入してもらうように促す。
ゆがみが大きい10年債のゾーンに直接働きかけるのではなく、金利カーブの手前から全体的に金利を押し下げ、徐々にゆがみを解消させる狙いだ。
「長期金利を適正な形にして低位に安定させる効果がある」(黒田総裁)
もっとも今回の措置で、金融機関が日銀の思惑通りに国債の買い入れを増やすかは不透明だ。
いずれ日銀が利上げに踏み切れば、金融機関が持つ国債に多額の含み損を発生するリスクがある。
対策公表後も金利カーブのゆがみは消えていない。
日本のインフレ率が、中長期でも政府・日銀の掲げる2%の物価目標に近づくなか、日銀が異次元緩和を続ける理由は一段と乏しくなっている。
黒田総裁はYCCについて「十分持続可能」と述べたが、次回の3月の決定会合前にも再び修正観測が広がる可能性は高い。
市場との攻防は一段と激しくなりそうだ。