暗号資産(仮想通貨)の代表格、ビットコインの価格が低迷している。
ビットコイン、3月から4割以上下げる
5月前半には3万ドル(約390万円)の大台を割り込み、3月の高値から4割以上下げる場面があった。
米連邦準備理事会(FRB)が保有資産を減らす量的引き締めを過去の2倍の速さで進めようとするなか、コロナ禍が生んだ過剰流動性に押し上げられてきた仮想通貨から資金が流出している。
フィデリティが401kでビットコインを組み入れ
それでも米国では仮想通貨の将来性に期待し、購入を検討する人が多い。
象徴的なのは米資産運用大手フィデリティ・インベストメンツによる4月下旬の発表だ。
同社の提供する確定拠出年金(401k)プランで、業界で初めてビットコインへの投資を可能にするという。
「仮想通貨を長期的な投資戦略に組み入れたい個人の関心が高まっている」。フィデリティのデイブ・グレイ氏はこう背景を説明する。
米国の投資銀行や機関投資家による仮想通貨ビジネスへの参入が相次ぐなか、個人の年金マネー流入の道も開けたことで、仮想通貨市場は一段と厚みを増す可能性がある。
当局は401kで仮想通貨選択に警鐘
フィデリティの今回の決定は米国内で波紋も広げている。
米労働省が3月、フィデリティの動きも念頭に、401kプランの投資先の選択肢として仮想通貨を加えることに慎重になるよう警告を発していたからだ。
労働省の指針では、仮想通貨の値動きの大きさや高いリターンへの期待の裏側にあるリスクを投資家が十分認識していない可能性、株や債券といった伝統的資産のように仮想通貨の投資価値を評価する手法が確立されていない点や発展途上の規制環境など懸念事項を列挙した。
労働省幹部はフィデリティの計画発表を受け、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに対し「米国人の老後保障を危険にさらす」と語った。
米議会でも問題視する声が上がる。「仮想通貨はリスクが高く投機的なギャンブルだ。
フィデリティが何百万人もの米国人の退職用の貯蓄でこうしたリスクを負うことを懸念している」。5月には仮想通貨への懐疑論を唱えてきたエリザベス・ウォーレン米上院議員らがフィデリティのアビゲイル・ジョンソン最高経営責任者(CEO)にあてた書簡を公表した。議会で仮想通貨の規制強化論が再び勢いづく可能性もある。
年金運用で仮想通貨の一般化はまだか
当局や議会の反発をみる限り、仮想通貨で年金運用という流れが米国で広がるかはまだ見通せない。
ただ投資家の根強い関心があるのは確かで、運用会社からすれば放っておくと投資機会を提供する他の会社に顧客を奪われかねないリスクもある。
日本でもいずれ議論になりそうな米年金運用の新局面の行方に目をこらしたい。
所見
アメリカでビットコインが年金運用に入れば、長期的な投資対象として公的にも認められたことになる。
いずれ日本でも同様の議論になるかもしれない。
それまでに多少は持っておいても良いかもしれない。