低金利の日本は金利差だけでなく、貿易赤字が続くと需給面でも円安が続く。
このまま円が売られ続けるのか。通貨分散で資産の防衛が必要。
日本の貿易赤字は常態化
日本の貿易赤字が常態化している。
財務省が17日発表した7月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引く貿易収支は1兆4367億円の赤字だった。
12カ月続く赤字の主因は資源の高騰と円安による輸入価格の上昇だが、半導体不足などの影響で円安でも輸出が鈍いこともある。
世界経済が減速すれば輸出の逆風となり、貿易赤字が定着しかねない。
7月の輸入は前年同月比47.2%増の10兆1895億円、輸出は同19%増の8兆7528億円でともに過去最大だった。
輸入は原油などエネルギー価格の高騰で、5カ月続けて過去最大を更新した。
円安でも輸出が伸びない
貿易赤字が続く背景に、円安にもかかわらず輸出量の伸びが小さいことがある。
7月の輸出数量指数(2015年=100)は103.5と前年同月に比べて2%下がり、5カ月連続で前年を下回った。
円安と海外のインフレにより円建ての輸出額は膨らんでいるが、数量は伸びていない。
主力の自動車産業でも完成車、自動車部品ともに輸出額は伸びたが、数量はそれぞれ前年同月比5.3%、10.6%減った。
半導体不足と、5月末まで続いた中国の上海市の都市封鎖(ロックダウン)が逆風だ。
特に中国は生産活動が低迷し、日本からの部品の輸出が大幅に減った。
日本でも部品の調達が不安定になり、トヨタ自動車は7月に国内工場の一部の稼働を止めた。
国内の完成車生産が停滞し、輸出も減ったもようだ。マツダも6月の北米向けが2万4千台と前年同月から14%減少。
米国市場が主力のSUBARU(スバル)も3万8千台と7%減った。
足元ではトヨタ幹部は「上海ロックダウンの影響はほぼなくなり、半導体の不足感もピークは越えた」とする。
部品調達や中国市場が正常化すれば日本からの輸出も増えるが、先行きは世界経済の減速が懸念される。
国際通貨基金(IMF)は7月、米欧での利上げや中国の不動産不振を起点とした金融不安を背景に、世界の貿易額の見通しを下げた。
22年と23年の伸び率を4.1%と3.2%と、4月時点からそれぞれ0.9、1.2ポイント下げた。
農林中金総合研究所の南武志氏は、足元で円安なのに輸出量が増えていないのは需要減も響いているとし「輸出量は1年ほど伸び悩み、貿易赤字が続きやすい状況だ」と指摘する。