大規模減税策、ほぼ全て撤回
英国のハント財務相は17日、トラス政権が9月に打ち出した「大規模減税策のほぼ全てを撤回する」と動画による声明で表明した。
年450億ポンド(約7.5兆円)の大規模減税策は財政悪化の懸念から市場の混乱につながっていた。
財務省は同日、中期財政計画の一部を前倒しで公表することも発表した。
トラス首相は14日にクワーテング財務相を解任し、後任に元外相のハント氏を起用していた。
財政規律を保つための施策を迅速にとるとしていた。
ハント氏は、来年4月から所得税の基本税率を19%に引き下げるとしていた計画を、20%に据え置くと発言した。
大規模減税策とともに経済対策の柱となっていたエネルギー価格急騰による家計や企業への支援策についても「来年4月までは継続するが、それ以降は見直す」とした。
ハント氏は「英国にとって今もっとも重要な目標は安定性だ。市場の変動は住宅ローンの負担や年金基金の価値に影響を与える」として、財政不安による国債市場の変調に配慮する姿勢を示した。
市場は好感、ポンド・英国債が買われる
大規模減税策の見直しを市場は好感し、英通貨ポンドや英国債が買われている。
17日のロンドン為替市場ではポンドが上昇し、一時1ポンド=1.13ドル台前半を付けた。クワーテング氏が解任された14日には1ポンド=1.11ドル台まで下落していた。
国債市場でも30年物の利回りが一時約4.3%と、14日の4.8%台から下落(価格は上昇)している。
トラス氏とハント氏は大規模減税策の見直しを含む中期財政計画について週末に協議し、16日夜にはイングランド銀行(中央銀行)総裁らに説明したという。
ハント氏は17日、下院で説明する。
中期財政計画はもともと11月に公表予定だったが、市場混乱を受けて10月31日に発表が前倒しとなっていた。
その一部がさらに17日に繰り上げられて公表されることになる。