物言う株主が取締役になった場合、企業価値向上のために動くのか。
配当を上げるだけ上げて、さよならしないのか。
株主還元だけでなく、事業投資を増やし成長させてほしい。
選任の取締役候補者全13人が可決
東芝が28日に開いた定時株主総会で、取締役候補者全13人の選任案が可決された。
物言う株主(アクティビスト)の投資ファンド幹部2人が含まれ、株主の賛否が焦点となっていた。
東芝は現在、株式非公開化を含む再編を検討しており、新たな取締役体制で手続きが本格化する。
再編を含む経営方針に対し、アクティビストの影響力が強まる可能性がある。
総会の議長を務めた島田太郎社長兼最高経営責任者(CEO)は13人の候補者案が可決されたとの決議結果を淡々と説明し、12時11分に閉会した。
当日の出席者数は198人で、14人が質問をした。
物言う株主、ファラロンとエリオット
焦点となった候補は投資ファンド幹部の2人で、米資産運用会社ファラロン・キャピタル・マネジメントの今井英次郎氏と米エリオット・マネジメントのナビール・バンジー氏だ。
2人の受け入れは指名委員会委員長のレイモンド・ゼイジ氏が主導し、ゼイジ氏もファラロンの出身だ。
社外取締役の綿引万里子氏(元名古屋高裁長官、弁護士)は「取締役構成の多様性や公平性、バランスを欠いていると判断せざるを得ない」として2人の受け入れに反対を表明していた。
質疑応答では「ファンド関係者が独立性を保てるのか」などの懸念を示す株主もいた。
社長の島田氏、副社長の柳瀬氏なども
このほか、3月に社長に就任した島田氏、副社長兼最高執行責任者(COO)の柳瀬悟郎氏の選任のほか、議長候補としてGCA創業者で現フーリハン・ローキー会長の渡辺章博氏の選任も可決した。
東芝は2019年にアクティビストとの協議を経て社外取締役4人を受け入れており、今回も全員が再任した。前社長の綱川智氏は取締役を退任した。
前体制ではグループ分割を計画したが
前取締役体制では21年11月、グループ全体を分割する計画を公表した。
意思決定が早まる利点などを訴えたが、22年3月の臨時総会では株主の反対多数で否決された。
分割案は中断し、東芝は現在、株式非公開化を含む再編を検討している。
再編の検討は新たな取締役体制で本格化する見通しとなっている。
総会の質疑応答では株主から「東芝は国防や原子力発電を預かっている。そう簡単にやすやすと非上場化するのは好ましくない」との意見もあった。
総会に参加した東京都品川区の52歳の男性は「東芝をもう一度グローバルで戦える企業にしてほしい」と話した。