リスクを取って、投資規模を拡大し続けてきたソフトバンクグループは、株安と金融引き締めで大きな赤字となった。
怖いのは、現状の赤字が一過性ではなく、株安が続く限り持続的に赤字拡大する可能性があること。
投資先に金の卵が無ければ、さすがの孫さんも耐えられない。孫さんの目利きを信じて見守るしかない。
ソフトバンクグループ、半年で赤字5兆円
ソフトバンクグループ(SBG)の苦境が深まっている。2022年4~6月期の連結決算(国際会計基準)は2四半期連続で最終赤字となり、合計で5兆円強の巨額損失を計上した。
高値局面での積極投資があだとなり、利上げ転換後の株安が収益を直撃している。
金利高で資金調達コストが増す恐れもある。新規投資の抑制とリストラを最優先する構えで、「守りの経営」は長期化しそうだ。
「いま振り返れば自分たちの評価がバブル状態だったと反省している」。
8日に記者会見したSBGの孫正義会長兼社長は神妙な面持ちで語った。
傘下のビジョン・ファンドの累計の利益はピーク時に約7兆円に達していたが、22年4~6月期に約1100億円まで急減した。
なかでも19年に自己資金だけで運用を開始したビジョン・ファンド2号は累計の投資損益が6月末時点で約1兆3000億円の赤字となった。
投資先の大部分を占める未上場企業の価値が大幅に毀損した。
投資戦略に狂いがあったことを認める
「大きな利益が出ているときに有頂天になっていた」。
孫氏は株高を前提とした投資戦略に狂いがあったことを認めた。
昨年までの株高局面で、SBGは有望と見込んだ新興企業に投資してきた。
ただ高値を付けていたハイテク株ほど直近の株価の下落幅は大きく、SBGの業績に深刻な打撃を与えている。
強気でならしたSBGの投資戦略は練り直しが迫られそうだ。
孫氏は「冬がどれぐらい続くのかはわからない」などと語った。
金融緩和のカネ余りが支えた株高は転換点を迎えている。
22年4~6月期のファンドの新規投資の承認額は6億ドルと前年同期のわずか3%まで縮小した。
ビジョン・ファンドですでに投資している473社については「金の卵があると信じたい」(孫氏)と述べ、新規投資を控えて既存投資先の価値向上に注力する方針を示した。
聖域なきコストダウン
状況の好転は望みにくいとして「聖域なきコストダウンに取り組む」(孫氏)。
ビジョン・ファンド運営会社はグローバルで人員削減を進める。SBG傘下の米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループについても売却する意向があることを認めた。
SBGが最重要の経営指標と位置付ける時価純資産(NAV)は22年6月末時点で約18兆5000億円と同年3月末から横ばいだったが、円安で外貨建て資産の評価が高まった影響が大きい。
ドル換算では3カ月間で約160億ドル(約2兆1000億円)減った。
財務面では一層の守りを固めている。
保有株式に対する純有利子負債の割合を示す負債カバー率(LTV)は22年6月末時点で14.5%と、同年3月末の20.4%から大幅に改善した。
保有する中国のアリババ集団株を活用した資金調達で手元資金を厚くした効果が大きい。
財務面の不安は薄れた半面、株安で目減りした資産をさらに資金化している形となり、縮小均衡に陥る可能性がある。
今後の金利上昇や株安で経営圧迫
今後も金利上昇や株安は経営の圧迫要因となる。
17年に立ち上げたビジョン・ファンド1号はサウジアラビア政府系ファンドなど一部の投資家に出資金の7%を「固定分配」として推定で年2000億~3000億円を支払ってきた。
さらに金利高が進めば、社債やローンの利払い負担が増える。
SBGは22~23年度に計5200億円の外債の償還期限を迎える。金利1%上昇で年約50億円コストが増える計算だ。
株安はSBGが資金調達する際に担保として差し出す株の価値を下げる恐れがある。
SBGはアリババや英半導体設計子会社アームなどの株式を活用して資金調達してきたが、今後もこうした戦略が続けられるかは不透明だ。
22年度内をめどに準備中の英半導体設計子会社アームの新規株式公開(IPO)が実現すれば、資金調達の手段が増える。
アームの業績は好調なものの、ハイテク株安の影響で市場で高い評価を得られない恐れが出ている。