政府は13日、少子化対策の拡充に向けた「こども未来戦略方針」を決定した。
岸田文雄首相は記者会見で、出生率の低下を反転させるため若者の所得増が必要だと強調した。
戦略方針は子育て世代への給付策を並べたが、安定財源の確保に向けた道筋は描けていない。
16日の閣議決定をめざす経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に反映する。
首相は2024年10月分から児童手当を拡充すると表明し「若者、子育て世代の所得を伸ばすことに全力を傾注していく」と語った。
「若年人口が急減する30年代に入るまでが少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスだ」と訴えた。
目玉となる児童手当は今は中学生までの支給期間を高校生の年代まで延長する。
支給額は0〜2歳は1人あたり月1万5000円、3歳から高校生までは同1万円となる。
第3子以降の場合は0歳から高校生まで同3万円を支給する。
出産や子育てをしやすくする制度も給付で後押しする形式だ。
首相は出産支援について「26年度からの出産費用の保険適用などを進める」と言明した。
給付型奨学金は24年度から多子世帯や理工農系の学生などの中間層(世帯年収およそ600万円まで)に拡大する。
働き方改革を巡っては2歳未満を育てる親が時短勤務を選んだ場合、手取り収入が時短を導入する前と変わらないようにする仕組みを25年度にも創設する。
首相は「経済成長と少子化対策が車の両輪だ」と強調した。
「持続的で構造的な賃上げ」「民間投資増加の流れを加速化」などを挙げたが、成長戦略の具体策は乏しい。
一連の給付政策には24年度からの3年間に年3兆円台半ばが必要となる。
首相は「2030年代初頭までにこども家庭庁の予算を倍増する」とも言及した。
財源はなお曖昧だ。首相は消費税などの増税はせず「実質的な追加負担が生じないよう歳出改革を徹底する」と主張した。
「公費の節減や国民の社会保険負担を軽減する効果を活用する」と説いた。国民や企業に広く負担を求める「支援金制度(仮称)」は社会保険料に上乗せして徴収する方向で検討する。
首相は「歳出改革の内容は毎年の予算編成を通じて具体化していく」と説明した。
戦略方針には安定財源は28年度までに確保すると記すにとどめた。それまでは必要に応じてつなぎ国債「こども特例公債」を活用する。